ABL阻害剤の臨床応用により、Ph陽性白血病の進行期、急性転化への移行は激減した。しかし、残る問題は残存する、Ph陽性白血病幹細胞をいかに制御して、遺伝子変異の発症を抑制し、真の治癒に向けた治療法を確立することである。そのため、まずBCR-ABL陽性の幹細胞の性状について、解析を行うこととした。我々は、倫理委員会承認後、末梢血CD34陽性細胞を単離し、センダイウイルスベクターを使用して、iPS細胞を作成した。次に、BCR-ABLを有したレトロウイルスベクターを用いて、トランスフェクションを行い、BCR-ABL陽性のiPS細胞の作成に成功した。これらの細胞を用いて、フェノタイプの解析、またマイクロアレイによる発現解析を行った。
次にHippo経路とエネルギー代謝経路との関連が示唆されており、Ph陽性白血病におけるAMP-activated protein kinase(AMPK)の関与について検討した。peroxisome proliferator-activated receptor γ (PPARγ)アゴニストのピオグリタゾンを投与により、AMPKのリン酸化が確認され、濃度依存的に抗腫瘍効果がみられた。またABL阻害薬とピオグリタゾンの併用で抗腫瘍効果の増強をみた。さらに糖代謝異常のある慢性骨髄性白血病症例にピオグリタゾンとABL阻害薬を投与したところ、さらなるPh陽性細胞の減少がみられた。よってABL阻害薬とピオグリタゾンの併用はPh陽性白血病幹細胞の減少につながる可能性が示唆された。
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