研究課題
26年度(初年度)は、Treg除去による、免疫活性亢進を評価できるin vitro実験系を作製することを目指して、実験を進めた。まず、Tregの単離と増殖を行った。制御性T細胞(Treg)は健常人末梢血単核球から CD4+/CD25high/CD127lo 分画を セルソーター、または、磁気ビーズを用いて採取することにより得た。採取できるTreg細胞数が少ない(末梢血50mLから5X10e4)ため、CD3/CD28磁気ビーズを使って増殖を試みた。2週間で約50倍程度に増殖可能であった。対照として非Treg分画CD4+/CD25分画も同様にCD3/CD28磁気ビーズを使って増殖させた。次に、同一健常人末梢血単核球から調製したCMVpp65-CTLとEBV-LCLを調製し、CMVpp65エピトープペプチドをパルスしたEBV-LCLとCMVpp65-CTL及びTregを共培養し(10日間)、CMVpp65-CTLの増殖に与えるTregの影響について検討した。調製したTregは、約50%程度CMVpp65-CTLの増殖を抑える結果を得た。一方、Tregの対照として増殖させたCD4+T細胞は、30%程度CMVpp65-CTLの増殖を抑制した。Tregを加えたときと、対照のCD4+T細胞を加えたときの差が小さいので、現在、健常人数人の末梢血単核球でリピートを行っている。また、パラフィン切片(口腔がん、肺がん、前立腺がん)標本を用いて、各がん組織中のTregの浸潤状態をFoxP3とCCR4の二重染色で観察している。浸潤数としては、口腔がん、肺がんで多く、前立腺がんでは少なく、癌種による差がみられた。FoxP3陽性細胞中のCCR4陽性率は、いずれの癌種においても症例によって差がみられており、今後、その意義について検討していく。
3: やや遅れている
上述のように、Tregが、CTLの増殖を抑制するところまでは確認できたが、抗CCR4抗体で、Tregを除去した場合にCTLに対する増殖抑制が解除できるかどうかについてはまだ確認がとれていない。しかしながら、別の実験で抗CCR4抗体によりTregが除去できることは確認できており、技術的な問題はなく、短期間(数か月)に遅れをとりもどすことが可能と考えている。
1.抗CCR4抗体のTregによるCTL増殖抑制解除。26年度に構築した、TregによるCMVpp65-CTL抗原特異的増殖抑制系を用いて、抗CCR4抗体のTregによるCTL増殖抑制解除について検討する。 2.TregのCTL増殖抑制、機能抑制にかかわる分子について検討する。上述したTregによるCTL増殖抑制系に、tregの替りにTreg由来培養上清を加え、抑制効果がみられるかどうか検討する。抑制効果がみられる場合、上清中の既存の抑制性サイトカイン(TGFb, IL-10, IL-35等)濃度を測定し、濃度が高いサイトカインがある場合はそのサイトカインを添加した場合と、抑制効果が同等となるかどうか検討する。また、Treg上の免疫抑制分子(PD-L1, galectin-9等)の発現を検討し、その免疫抑制分子に対する抗体でTregによるCTL増殖抑制が解除可能かどうか検討する。 3.CMVpp65発現細胞株(26年度にCMVpp65抗原を強制発現させた口腔癌細胞株HSC3を得た)を免疫不全マウスに播種し、CMVpp65-CTLで治療できることを確認する。確認後、この治療効果がin vitroで調製したTregで抑制できるかどうか検討する。Tregで治療効果が減弱した場合、抗CCR4抗体と、NK細胞の投与で治療効果がもどるかどうか検討する。また、腫瘍内における、Treg浸潤状況について、免疫組織化学的に検討する。HSC3細胞株はIFNgにより、PD-L1の発現が増強することをin vitroで確認しているので、さらに、PD-1抗体との併用における治療効果の増強についても検討していく。
TregによるCTL増殖抑制を確認する実験に必要な試薬を追加で購入する必要があったため。
27年度においても継続使用可能であるので、継続して使用。
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Clin Cancer Res.
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The Frontiers in Life Sciences. 生命科学から創薬へのイノベーション
巻: 1 ページ: 183-195