研究課題
NOD/Shi-scid,IL-2RγKO(NOG)マウスを用いて、モガムリズマブによるTreg除去を基盤としたがん免疫治療モデルマウスの構築を進めている。ヒト腫瘍細胞株ゼノグラフトNOGマウスにヒト末梢血単核球(PBMC)と抗CCR4モノクローナル抗体(KM2760)を投与し、PBMC中に含まれる腫瘍抗原特異的CTLによって腫瘍に対する傷害がKM2760によって増幅されるかどうか評価することを目標としている。しかしながらヒト末梢血中に含まれる腫瘍抗原に対するCTLの数は限られているので、腫瘍抗原ではないが、サイトメガロウィルスpp65抗原を腫瘍抗原となぞらえた系を構築した。pp65抗原cDNAを組み込んだレンチウィルスベクターを用いて、pp65抗原を強制発現させた口腔癌由来細胞HSC-2,HSC-3,HSC-4 及び、EBV感染B細胞細胞を得た。これらの細胞株は、in vitro で健常人末梢血単核球から誘導したpp65特異的CTL(pp65-CTL)により特異的に傷害されることが確認された。次に、pp65抗原強制発現HSC-3株(HLA-A2+) 2X10e6個を、NOGマウスの鼠蹊部皮下に接種した後、2週間後にHLA-A2陽性健常人由来PBMCを腹腔内に2X10e6個投与した。さらに2週間後に腫瘍を取り出し、腫瘍、および、浸潤したリンパ球を免疫組織学的に検討した。HE染色像において、腫瘍塊の表層部に癌細胞が残り、内部は、ほとんど、消滅した状態が観察できた。PBMC中に含まれるpp65-CTLにより傷害を受けたことが想定される。そして、腫瘍が残存する表層部おいて、主にCD8陽性細胞が、腫瘍の辺縁部に沿うように浸潤していた。しかしながら、CCR4+FOXP3+のTregの浸潤数が非常に少ないため、CCR4 ligand の発現が高いB-LCLでのモデルを構築中である。
2: おおむね順調に進展している
上記のように、NOGマウス体内で生着した腫瘍がヒトPBMCの投与で傷害されることが示されている。また、腫瘍の形態は、ヒト腫瘍でみられる扁平上皮癌の特徴を有し、リンパ球の浸潤もヒト腫瘍内のものに良く類似していた。また、ヒトリンパ球がマウス末梢血、脾臓にも10%程度含まれており、ヒトがん免疫治療のマウスモデルとして有用と考えられる特徴を有していた。このことは、今後、抗CCR4抗体を用いた治療実験モデルとしても活用できるものと考えられる。今回行ったHSC-3細胞株のゼノグラフトでは、Tregの浸潤が少ない問題点があるが、CCR4 ligand の発現が高いB-LCLやホジキンリンパ腫細胞株でのモデルを構築することで解決できるのではないかと考えている。
ヒト腫瘍ゼノグラフト中のCCR4+FOXP3+細胞の浸潤を改善させた後、抗CCR4モノクローナル抗体(KM2760)を用いた治療実験を行う。KM2760投与による、抗腫瘍効果増強について以下の点から評価する。1)腫瘍内、および末梢血中Tregの減少。2) 腫瘍内、および末梢血中pp65-CTLの増加。3) 腫瘍縮小効果. また、CTL上の免疫制御分子の発現についても検討し、バイオマーカーとしての意義について検討する。また、HSC-3ゼノグラフトの系で腫瘍内浸潤リンパ球上にPD-1が強く発現し、さらに、腫瘍上にPD-L1の発現がみられることから、抗PD-1抗体、PD-L1抗体による治療実験モデルとしても有用である可能性がある。抗PD-1抗体による治療実験も実施し、抗腫瘍効果の増強を中心に、検討していく予定である。
NOGマウスの購入(12,000円)の購入を考えていたが、他試薬購入との兼ね合いで、1匹分に満たなくなったため、この額を次年度に回した。
次年度交付額と合わせて次年度のNOGマウス購入経費とする予定。
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Jpn J Clin Oncol
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