研究課題
エフェクター制御性T細胞(eTreg)の腫瘍発生、進展における意義と、eTreg除去による、新たながん治療法の有効性を、in vitro及びマウスを使った実験モデルで評価することを目的として本研究を推進した。まず、in vitro で、eTregの細胞障害性T細胞(CTL)に対する機能抑制作用を検討した。健常人由来 eTreg、抗原特異的CTLを同一ドナーから誘導し、eTregによる、CTLの抗原刺激後の増殖抑制効果について検討したところ、約50%の増殖抑制効果がみられた。また、細胞傷害活性に対する抑制効果も観察された。しかしながら、eTreg分画以外のT細胞分画であっても、ほぼ同様かそれ以上の増殖抑制効果がみられることも経験された。eTreg以外にも、抑制機能を持ったT細胞が、培養環境によっては、出現する可能性があると考えれ、in vitro でのeTreg の機能評価には注意を要すると思われた。次にCCR4抗体によるeTreg除去効果と、抗原特異的CTL誘導増強効果について、健常人由来末梢血単核球(PBMC)を用いて検討した。顕著なeTreg除去効果がみられたが、CTL誘導効果の増強は必ずしも顕著ではなかった。今後、eTreg の蓄積が顕著な腫瘍内浸潤リンパ球を用いて実施予定。in vitroの検討と併せて免疫不全マウスNOD/Shi-scid,IL-2RγKO Jic(NOGマウス)にヒト口腔がん由来細胞株を移植したゼノグラフトの系で、eTreg除去による、抗腫瘍免疫増強効果、治療効果の検討を試みた。ヒトリンパ球の腫瘍内への高浸潤が確認できたものの、Tregの浸潤は極めて僅かであり、モデルマウスの構築の成功には至らなかった。しかしながら、PD-1陽性CD8陽性細胞のPD-L1陽性腫瘍細胞への浸潤が高頻度に観察され、免疫チェックポイント阻害モデルへの展開が期待される。
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実験医学
巻: 34 ページ: 122-131
最新医学
巻: 71 ページ: 126-132