研究課題
本研究では従来開発してきたテーラーメイドワクチンと同等以上の臨床効果を有し、事前の特殊検査を必要とせず、かつ投与局所刺激性の強いフロイント不完全アジュバントを用いない患者にやさしい次世代経皮カクテルワクチンの開発を行う。本年度は以下の研究を実施した。1.経皮アジュバントの開発・至適化・作用機序の解明: 前年度に発見したアジュバント作用増強薬剤、グリチルリチンはイミキモド等の自然免疫レセプター関連経皮アジュバントと併用することによりその作用を増強すること、他のHMGB1阻害剤でも同様の増強作用が認められること、およびEG.7移植腫瘍治療モデルにおいて腫瘍増殖の抑制作用が増強されることを示した。さらに、免疫増強の作用機序として、免疫抑制作用を有する炎症性サイトカインの遺伝子発現がグリチルリチンにより抑制されること、およびHMGB1により誘導される免疫抑制が抑制されることにより免疫増強作用が起こることが明らかとなった(論文投稿中および特許申請準備中)。2.塗布ワクチンの開発:分子量1000前後のワクチンペプチドを皮膚の抗原提示細胞に到達させるためには、角質バリアーを通過させる必要がある。従来、物理的に角質層を剥離する方法が試みられているが普及していない。そこで、化学的に除去する方法を用いた塗布ワクチンの開発を試みた。その結果、乳酸溶液に界面活性剤及び高分子ポリマー基剤を混合することにより、効果的かつ低侵襲性に角質層の除去が可能であり、OVAペプチドの塗布によりOVA特異的T細胞の増殖を誘導できることを示した(特許申請準備中)。3.経皮アジュバントの臨床研究の基礎解析:これまでに開発した自然免疫レセプター非依存型経皮アジュバントの健常者に対する臨床試験を実施し、安全性を確認した。さらに、がん患者を対象に、ペプチドワクチンと経皮アジュバントとの併用の臨床試験を開始し血液サンプルの保存を行った。
3: やや遅れている
26年度に実施終了しなかった研究項目についてはほぼ終了し、論文投稿まで達した。さらに、特許申請の準備にも至った。27年度より開始予定の研究項目については、3項目中2項目を実施することができた。研究項目:塗布ワクチンの開発に関して、最も難題であった抗原塗布による免疫誘導がケミカルピーリングの手法を導入することにより解決した。ケミカルピーリングは美容皮膚科領域では一般的であるが、ワクチンへの応用は初であり、特許申請準備に至った。研究項目:臨床研究の基礎解析については、当初計画では、自然免疫レセプター非依存型経皮アジュバントとペプチドワクチンとの併用試験を患者で実施予定であったが、倫理委員会より、健常人を対象とするアジュバント単剤の試験を先行して実施することが求められた。これにより、ワクチンとの併用試験実施が大幅に遅れたが、27年度中に開始でき、血液検体の保存及び一部検体の基礎解析の開始に至った。研究項目:キメラマウスによる免疫誘導解析については、キメラマウスの輸入手配及び自家繁殖用スペースの確保ができなかったために本年度は実施しなかった。以上のことより、当初の計画に沿って概ね進展しているものの、やや遅れていると判断した。
(今後の研究方策)27年度に実施終了しなかった項目について研究を継続し、早期論文化を目指す。また、当初の計画を一部変更し、以下の項目について研究を行う。1.塗布ワクチンによる抗腫瘍免疫の誘導:塗布ワクチンのプロトタイプにさらなる改良を加え、より強力に免疫誘導可能なワクチン製剤を完成させる。この製剤を用いてCTL誘導の確認を行うとともに、EG.7移植腫瘍治療モデルにおいて腫瘍増殖抑制作用を検討する。2.グリチルリチンの塗布ワクチンへの応用:グリチルリチンのアジュバント増強作用について、塗布ワクチンと併用する際の投与ルート・方法・時期による違いを検討し、臨床応用の基礎を確立する。3.腫瘍周辺微小環境への影響の検討:経皮ワクチン投与によるCTLの腫瘍局所及び投与部位への集積・活性化について、動物モデルを用いて解析を行う。さらに、PD-1/PDL-1やCTLA-4などの免疫チェックポイント関連分子の腫瘍局所での変動についても従来型ワクチンとの比較検討を行う。4.経皮アジュバント臨床研究の基礎解析:自然免疫レセプター非依存型経皮アジュバントとペプチドワクチンとの併用臨床試験で得られた血漿サンプルについて、抗ペプチドIgG抗体産生における経皮アジュバントの増強作用を検討する。さらに、CTL誘導作用についても検討を加え、ペプチドワクチン療法への応用の可能性を評価する
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