研究課題
本研究では、申請者が新規乳がん関連蛋白質として同定した機能未知のEphA10受容体に対する抗体医薬の開発を推進するため、EphA10の機能を明らかにし、抗腫瘍効果メカニズムと起こりうる副作用を解析することで、有効で安全な抗体シーズの創製を目指している。上記の研究目的を達成するため、本年度はまず、EphA10を介した作用をクリアに解析するため、EphA10のトランスフェクタント細胞を作成し、親株に比較してEphA10が細胞膜に強発現していることを確認した。また、EphA10のノックダウン系も確立すべく、数種のsiRNAのトランスフェクション条件を検討したところ、EphA10の遺伝子発現を20%ほどまで抑制可能な系を構築できた。また、EphA10とのヘテロダイマーによる活性化の影響を解析すべく、EphA2との関連が指摘されているHer2搭載プラスミドを構築し、その蛋白質発現を確認した。さらに、EphA10の細胞外領域に対して樹立したモノクローナル抗体の薬効機序解明を見据え、特性を評価した結果、EphAファミリーの中でEphA10特異的に結合し、KDが1.9nMと既存の抗体医薬と同等の親和性を有していた。また、本クローンは、インターナリゼーションしうる有用な抗体であった。一方で、in vivoでの機能を解明するため、EphA10のノックアウトマウスを樹立し、少なくとも外見上、野生型マウスと同じように成育し、自然交配することを明らかにした。また、自然発がんモデルマウスとして、MMTV-PyVTマウスを飼育し、発がんして肺転移することと、腫瘍組織にEphA10が発現していることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書で計画した内容にそって研究が進行しているため。
EphA10のトランスフェクタント細胞を構築できたため、親株と比較することで、接着性や増殖、浸潤性といった機能を解析する。また、構築したHer2搭載プラスミドを両細胞に発現させ、Her2とEphA10の相互作用の可能性を図る。また、EphA10下流のシグナル伝達機構の解明を目指し、リガンド刺激時に発現変動する蛋白質の同定を試みる。さらに、樹立したノックアウトマウスの不フェノタイプ解析も進める。また、臨床応用も見据え、ファージヒト型抗体ライブラリから、ヒト抗EphA10抗体の作成検討も始める。
研究を推進するために、計画的に研究費を使用してきたが、3月の旅費の概算で誤差が生じてしまったため、次年度使用額が生じた。
次年度(平成27年度)の当該研究の推進に使用する予定である。
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Biochemical Biophysical Research Communications.
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