聴覚は、動物が外部環境を音として認識する感覚であり、コミュニケーションや外敵の察知などに機能する。特に哺乳動物は非常に高次で多様な聴覚機能を有することが知られており、その進化・適応メカニズムの解明は動物全体の進化・多様性を理解する上で不可欠な知見である。一方で、聴覚を担う機械受容システムは特定の責任遺伝子が明確でなく、システム自体の複雑さのために視覚などの 他の感覚器と比較して進化や多様性の研究は限られている。本研究では、哺乳類と鳥類からの-omicsデータの産出と情報学的、進化学的な比較解析に基づき、聴覚システムの適応的な機能獲得過程を明らかにしていくこと、さらに、その過程に深く関わる聴覚システムの責任遺伝子を明らかにすることを目的とした。これまでに、哺乳類のマウス、および鳥類のキンカチョウから内耳を単離し、RNA-seq解析に用いる複数のライブラリの構築準備が完了している。また、既存のデータベースより耳、および関連部位での遺伝子発現情報や疾患関連遺伝子等の調査・収集を行った。今後は、これらの材料、データを用いて、実験、および情報解析の両面からさらなる目的の達成に向けて研究を実施していく予定である。
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