研究課題/領域番号 |
26430182
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
川村 哲規 埼玉大学, 理工学研究科, 講師 (10466691)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エンハンサー / ヒストン修飾 / ゼブラフィッシュ / スクリーニング / クロマチン免疫沈降法 |
研究実績の概要 |
発生過程において、時期領域特異的な遺伝子発現はエンハンサーにより制御される。エンハンサーには特異的なヒストン修飾(H3K27ac)が存在し、これを認識するモノクローナル抗体によるクロマチン免疫沈降法(ChIP法)と次世代シーケンスを組み合わせたChIP-Seq法により、網羅的にエンハンサー領域が同定されている。しかしながら、ChIP-Seq法で得られた膨大な数のエンハンサー候補断片について、生体内におけるそれぞれの活性を評価することは難しい。そこで、胚への注入が簡便にでき、発生過程を通じて蛍光観察が可能なゼブラフィッシュ胚を用いて、エンハンサー活性を指標とした新たなエンハンサー同定法ChIP-Injection法の確立し、機能解析を行うことを目的とした。具体的には、脊椎動物胚の後端にあり、幹細胞様の性質を有する尾芽をモデルとして、エンハンサーをスクリーングした。平成26年度は、H3K27acに対するChIP法により尾芽エンハンサーlibraryを作製し、ゼブラフィッシュ胚に導入することで、ChIP-Injection法の確立を目的として研究を遂行した。その結果、これまでに解析した53種類の候補断片のうち、尾芽由来の体節、脊索、神経管などに特異的に発現を誘導する13個のエンハンサー候補断片を同定した。さらに、それらのシーケンス解析を行い、ゲノム上の位置を特定し、周辺に存在する遺伝子を調べた結果、エンハンサーの制御下にある候補遺伝子を絞り込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、平成26年度は、尾芽エンハンサーlibraryを作製し、ゼブラフィッシュ胚に導入することでスクリーニングを行い、エンハンサー断片を同定することで、新たなエンハンサー同定法ChIP-Injection法の確立を目指して、研究を遂行した。その結果、これまでに53個を解析したうち、13個のエンハンサー候補断片を同定したことから、当初の計画を達成したと考えられ、おおむね順調に進展していると思われる。さらに、最近では、質の高い尾芽エンハンサーlibraryが作製できたことと、エンハンサー同定のノウハウが蓄積した結果、エンハンサー同定される割合が50%弱と高くなっている。このことから、スクリーングを継続して実施する予定であるが、平成26年度において、その基盤となる成果を得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに、平成27年度においても作製した尾芽エンハンサーlibraryを用いて、スクリーニングを継続して行い、尾芽エンハンサー候補断片を同定する。さらに、同定した興味深いエンハンサー候補断片に関しては、その活性を詳細に解析するために組換え魚を作製し、発生過程を通じたエンハンサー活性を調べる。さらに、エンハンサーの制御下にある候補遺伝子の発現パターンと比較することで、同定したエンハンサーの制御下の遺伝子を同定する。TALENやCRISPRなどのゲノム編集技術を用いて、エンハンサーを欠損した変異体の作製を行うことを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費に関しては、当初の計画とほぼ同じ支出額であったが、旅費に関しては近郊で開催された学会が多かったため、交通費や宿泊費などが想定よりも少ない金額で賄えたため、未使用額が生じた。さらに、その他の経費で計上した論文投稿用の英文校閲に関しても、平成26年度中には間に合わず、その結果、次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には出席予定の学会・研究会が遠方で開催されるものが殆どでそれに充てる予定である。さらに、平成26年度中には間に合わなかった英文校閲は、平成27年度の初めに既に行っており、未使用分は使用した。
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