研究課題
発生過程において、時期領域特異的な遺伝子発現はエンハンサーにより制御される。近年、活性化されたエンハンサーには、特異的なヒストン修飾(H3K27ac)が存在することが明らかになり、これを認識する抗体を用いた免疫沈降法と次世代シーケンサーを組み合わせたChIP-Seq法によりエンハンサーが網羅的に同定されている。しかしながら、ChIP-Seq法では、同定されたエンハンサーがどのような活性を有しているのかは不明で、その後、in vivo解析により活性を調べる必要がある。さらに候補断片の数が膨大なため、それぞれの活性を解析することは難しい。そこで、胚への注入が簡便にでき、発生過程を通じて蛍光観察が可能なゼブラフィッシュ胚を用いて、エンハンサー活性を指標とした新たなエンハンサー同定法ChIP-Injection法を確立し、機能解析を行うことを目的とした。脊椎動物の胚発生期に胚の最後端に位置する尾芽をモデルとして、尾芽および尾芽由来の組織に特異的に働くエンハンサーを同定することを試みた。平成26年度までに、切断した尾芽を用いて、H3K27acに対するクロマチン免疫沈降法により得られた断片をEGFPリポーター遺伝子に導入した尾芽エンハンサー・ライブラリーを作製し、幾つかのエンハンサー活性を有する断片を得ていた。平成27年度は、計画に基づきスクリーニングを継続した結果、これまでに107個の候補断片をゼブラフィッシュ胚に導入した結果、39個のエンハンサー候補断片を同定した。さらに、この内の4つについて、トランスジェニック胚を作製し、エンハンサー活性を再現することを明らかにした。また、同定した複数のエンハンサーに関して、同染色体上に存在する遺伝子の発現パターンと類似することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、当初の計画通りにスクリーニングを継続した結果、これまでに107個のエンハンサー候補断片をゼブラフィッシュ胚に導入し、39個のエンハンサーを同定した。さらに、興味深い活性を示した4つのエンハンサー候補断片について、トランスジェニック魚系統を単離し、スクリーニング時の活性を再現することを確認した。さらに、トランスジェニック魚を用いて、同定したエンハンサーの活性を詳細に解析することが出来た。当初の計画通り、平成27年度は、スクリーニングで得られたエンハンサー断片から、今後詳細に研究を行うエンハンサーの絞りこみが出来たため、概ね順調に進展していると考えられる。
当初の計画通りに、スクリーングを継続するとともに、興味深い活性を示したエンハンサーに対して、作製したトランスジェニック魚を用いて、解析を行う。さらに、TALEN, CRISPRによるゲノム編集技術により、変異体の作製、解析を進める予定である。
物品費に関して、割安なキャンペーン品を積極的に購入した結果、当初の計画よりも少ない費用で賄えたため、未使用額が生じた。
今後、さらなる追加実験が必要となることが見込まれるため、未使用額を充てることを考えている。
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Developmental Biology
巻: 409 ページ: 543-554
http://seitai.saitama-u.ac.jp/
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