研究課題/領域番号 |
26430182
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
川村 哲規 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10466691)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エンハンサー / ヒストン修飾 / ゼブラフィッシュ / スクリーニング / クロマチン免疫沈降法 |
研究実績の概要 |
個体発生は、時期及び領域特異的な遺伝子発現によって制御されている。これを司る機構としてエンハンサーによる制御が知られており、エンハンサーを同定することは遺伝子発現制御機構を理解するうえで重要である。近年、エンハンサーに特異的に存在するヒストン修飾が明らかとなり、それらに対するクロマチン免疫沈降法と次世代シーケンサーを組合わせた手法によりエンハンサーの網羅的な同定が進んでいる。しかしながら、この方法ではエンハンサーのゲノム上での位置は示されるが、エンハンサー活性はその後、生体内へ導入するなどの解析が必須である。さらに、予想されるエンハンサー数が膨大のため、目的のエンハンサーを絞り込むことは難しい。 そこで、受精卵への遺伝子導入や蛍光観察が容易なゼブラフィッシュ胚を用いて、生体内活性を指標とした新たなエンハンサー同定法を確立した。 本研究では脊椎動物の発生において多分化能を有する尾芽に着目し、尾芽領域に特異的なエンハンサーを同定することを目的とした。まず、18-22体節期胚の尾芽を切断し、H3K27Ac抗体を用いたChIP法により得られたDNA断片をそれぞれEGFPリポーターの上流へ挿入した尾芽エンハンサー・ライブラリを作製した。作製したライブラリからEGFPリポーターをゼブラフィッシュの受精卵へそれぞれ注入し、18-22体節期での蛍光観察をもとに領域特異的なEGFP蛍光を示すエンハンサーのスクリーニングを行った。その結果、導入した108個のうち39個において、尾芽由来の組織で特異的な活性が観察された。興味深い活性を示した4つについて組換え魚を作製し、スクリーニング時と同様の活性を確認した。さらに、ゲノム位置を明らかにし、制御候補遺伝子を同定した。以上から、ゼブラフィッシュ胚での生体内活性を指標としたエンハンサー同定法は高効率なエンハンサーの同定法であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、これまでにスクリーニングで同定された中から2つのエンハンサー断片に絞り込み、その領域に結合する転写因子や結合領域などを同定することに成功した。さらに、ゲノム編集技術を用いて、エンハンサー変異体を作製し、その表現形を解析した結果、体節形成に異常が生じていることを見出した。これは、当初立案した計画と照らし合わせ、概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、作出したエンハンサー変異体の表現形はこれまでの体節形成異常を示す変異体は異なることから、今後はこの変異体の表現形について、さらなる解析を進める予定である。さらに、ChIP-Injection法により同定した他のエンハンサーについても、解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度からの繰越金もあり、また、消耗品に関しても割安なキャンペーンなどを利用して購入した結果、当初の計画より少ない費用で賄えたため、未使用金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、さらなる追加実験が必要となることが見込まれるため、未使用金を充てることを予定している。
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