研究課題
発生過程において、時期及び領域特異的な遺伝子の発現はエンハンサーにより制御される。近年、活性化されたエンハンサーには、特異的なヒストン修飾(H3K27Ac)が存在することが明らかとなり、これを認識する抗体と次世代シーケンサーを組合わせたChIP-Seq法により、エンハンサーの網羅的な同定が行われている。しかしながら、ChIP-Seq法では、同定されたエンハンサーの活性については不明であり、その後in vivo解析により活性を解析する必要がある。さらに、同定されたエンハンサーの数が膨大であり、それぞれの活性を解析することは難しい。そこで、胚への注入が簡便で、発生過程を通じて蛍光を観察することが容易なゼブラフィッシュ胚を用い、エンハンサー活性を指標とした新たなエンハンサー同定法ChIP-Injection法を確立し、機能解析を行うことを目的とした。脊椎動物胚の後端に存在する尾芽をモデルとして、尾芽および尾芽から分化する体節に特異的に働くエンハンサーを同定することを試みた。切り出したゼブラフィッシュ胚の尾芽に対して、H3K27Acに対するChIP法を行い、エンハンサー候補断片をGFPリポーター遺伝子に繋いだ尾芽エンハンサー・ライブラリーを作製した。これまでに108個のエンハンサー候補断片をゼブラフィッシュ胚に導入し、39個のエンハンサー候補を同定した。さらに、この内の4つについて、トランスジェニック胚を作製し、エンハンサー活性が再現されることを確認した。同定した複数のエンハンサーに関して、同一染色体上にある遺伝子の発現パターンと類似することを見出した。さらに、ゲノム編集技術TALEN法を用いて、エンハンサーを欠失した変異体を単離した結果、エンハンサー欠失変異体では体節境界が形成されない異常を見出し、体節形成に必須の発現調節機能を担うエンハンサーであることを明らかにした。
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