研究課題/領域番号 |
26430184
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
緒方 博之 京都大学, 化学研究所, 教授 (70291432)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 巨大ウイルス / 海洋メタゲノム / 微生物多様性 / 微生物生態 / タラ海洋探査(②フランス) |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、海洋微生物探査が産する、全地球規模の海洋メタゲノムデータと物理化学的環境データに基づき、巨大ウイルスの生態学的役割を解明するために、バイオインフォマティクスによる包括的エコシステム解析を行うことにある。本年度の研究計画予定は、(1)巨大ウイルスの種多様性の解析、(2)巨大ウイルスの各系統の地理的分布、(3)宿主との相互作用の推定法の開発であった。本年度は特に当該研究全体にわたって基礎的な解析となる(1)を重点的に行った。研究代表者の研究室に所属する大学院生と共同で、RNAポリメラーゼ(RNApol)の配列に着目して、ミミウイルス科の巨大ウイルスの系統多様性を定量的に解析した。RNApolは、全ての細胞性生物に保存されており、かつ、現在知られているミミウイルス科のウイルスゲノムにも保存されており、ミミウイルス科の系統多様性を細胞性生物と比較するために最も適したマーカー遺伝子の一つである。技術的詳細は省略するが、タラ海洋探査プロジェクト、ヒト微生物叢プロジェクト、その他の大規模メタゲノムプロジェクト等のデータから、RNApol配列を抽出し、系統の多様性(厳密には系統数(Richness))をミミウイルス科/真正細菌/古細菌の間で比較を行った。その結果、系統多様性はRNApol配列全長にわたり、ミミウイルス科が最大で、真正細菌、古細菌の順番であることが明らかになった。この解析はリサンプリングを伴う希釈曲線カーブを用いて行った。同時に、生存曲線の検定で用いられる手法を応用し、Richnessの差が統計的に有意であることも明らかにした。また、Richness解析に加えて系統学的多様性指標(Phylogenetic Diversity Index)を利用した解析も行い、同様の結果を得た。目的(2)に関しては、大規模リードデータを処理するバイオインフォマティクスパイプラインの一部を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究目的(1)~(3)のうち、主に(1)に関する研究を進展させたが、学内に研究協力者を得て、研究計画時には正確には想定していなかった統計検定の手法を応用することができ、また、Phylogenetic Diversity指標を利用することにより、ミミウイルス科と原核生物の間でのRNApolの多様性の相違を多角的に捉えて解析することができた。このことも、研究計画時に明確に想定されていなかったが、研究の進展とともにその必要性が明らかになり、大学院生により実装・実施された。
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今後の研究の推進方策 |
現在「(1)巨大ウイルスの種多様性の解析」の解析パイプラインの一部をより精度の高い手法に改良している。その作業が終了したら、次は、大規模リードデータを用いて、ミミウイルス科のRNApolの多様性が、海域や水深、あるいは環境パラメタとどのように関連しているかを解析する。同時に、当該研究代表者も参加している欧州のOceans Sampling Dayプロジェクトから得られた中規模ではあるが、世界中の沿岸域を広くカバーしているメタゲノムデータも利用して、沿岸域と遠洋域でミミウイルス科の多様度に相違があるかをみる。本研究全体にわたる目的に、「多様性推定」、「相互作用推定」、「地理的分布」の三点があるが、第一点と第三点を平成27年度の優先課題として行い、その結果を同年度内に論文として報告する予定である。第二点の「相互作用推定」に関しては、タラ海洋探査プロジェクト内の共同研究者と調整を進め、また、「地理的分布」の結果を参考にして、詳細な目標設定を検討しながら進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を進めるにあたり、タラ海洋探査プロジェクトの会議に参加し、海外の研究協力者と情報交換、調整を行うことが重要である。平成26年度は5月(フランス)と10月(フランス)に海外があったが、10月の出張に関して、先方負担となった。
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次年度使用額の使用計画 |
本経費は、平成27年度の旅費もしくは、物品(計算機)購入に充てる予定であす。平成27年度8月より研究代表者の研究室に助教が一名赴任する予定である。助教にも当該研究に協力していただく予定であり、助教が当該研究のために使用する物品を購入する必要がある。
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