研究課題/領域番号 |
26430186
|
研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
清水 光弘 明星大学, 理工学部, 教授 (80231364)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ゲノム機能発現 / ヌクレオソーム / クロマチン / 反復配列DNA / 出芽酵母 |
研究実績の概要 |
数塩基対を単位とする単純反復配列であるマイクロサテライトはヒトゲノムの約3%を占めている。ヒトゲノムにおけるマイクロサテライトの出現頻度は単に塩基配列の出現確率では説明できず、高い頻度で存在する配列がある一方で、ほとんど存在しない配列がある。本研究は、マイクロサテライト配列のゲノムにおける特徴を明らかにすることを目的としており、マイクロサテライト配列のヌクレオソーム形成を評価し、その安定性とクロマチン動態を明らかにする。 本研究において、出芽酵母ミニ染色体の系を用いて、MNaseと化学切断法を併用することによって、in vivoでのヌクレオソーム形成を詳細に解析する方法を確立した。この方法を用いて、36 bpのトリヌクレオチドリピート配列(全10種類)のヌクレオソーム形成を評価した。その結果、(AAT)と(ACT)リピートはヌクレオソームの形成を促進し、(AGG)と(CGG)リピートはヌクレオソーム形成を阻害することが明らかになった。ヒトゲノムにおける存在頻度とヌクレオソーム形成能との関係には明確な相関は見られなかったが、イントロン、エキソン、非翻訳領域、遺伝子間領域などのゲノムの各領域におけるリピートの出現頻度との相関性を解析する予定である。さらに、近年同定された遺伝的疾患に関与するリピートのクロマチン構造の特徴についても解析を進めている。これらの結果に基づいて、ヌクレオソーム形成を促進するリピート配列を中心に、in vitro再構成ヌクレオソームの解析を進めている。 一方で、ヌクレオソーム形成を阻害するリピート配列の導入によって、出芽酵母のコアプロモーター領域にヌクレオソーム除去領域を形成させ、その形成が転写活性化を引き起こすことに十分であることを実証した。この結果は、リピート配列によってヌクレオソームの編制が規定され、遺伝子発現制御に関与することを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度は本研究に参加する大学院生が3名となり、卒研生6名を加えて、本研究課題に取り組んだ。研究実績で述べたように、トリヌクレオチドリピート配列のヌクレオソーム形成を系統的に評価し、強くヌクレオソーム形成を促進するリピート配列を新たに見いだした。また、リピート配列によってヌクレオソームの編制が規定されて、転写活性化を引き起こすことを明らかにした。さらに、出芽酵母の核を試料として化学的切断法によるヌクレオソームマッピングの方法を確立し、従来のMNaseによる限定消化法と比較した結果、in vivoで多様なヌクレオソームの形成の可能性を示唆する意外な新規の結果を得た。現在、その詳細な解析を進めている。 以上の結果から、期待していた成果が得られつつあるとともに、予想外な新知見の手がかりを見いだしたことから、当初の計画以上に進んでいると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度までに得られた結果から、ヌクレオソーム形成を強く促進する配列と阻害する配列に関して、その分子機構を探る。また、進化との関連について、ヌクレオソーム形成とゲノム各領域での出現頻度との相関を調べる。近年同定された遺伝的疾患に関与するリピート配列のクロマチン構造の特徴を明らかにし、リピートの伸長機構との関係について調べる。 さらに、in vivoとin vitroの両面から統合的に考察するために、マイクロサテライト配列のヌクレオソーム形成をin vitro再構成系によって評価する。平成28年度は、大学院生6名、卒研生4名とともに、これらの研究計画を推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入した物品のいくつかの納入価が安価であったため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
本研究課題に必要な消耗品(試薬・器具)の購入に使用する。
|