ゲノムにおけるヌクレオソームの解析には、従来、micrococcal nuclease(MNase)が広く用いられてきたが、MNaseによるDNAの切断には塩基配列特異性があるため、得られた結果の解釈に問題点が指摘されている。本研究において、ヒストンH4のDNA結合部位特異的化学切断法を核に適用し、MNase法と併用したパラレルマッピング法を確立した。この方法を主軸に、マイクロサテライト配列のうち36 bpのトリヌクレオチドリピート配列(全10種類)におけるヌクレオソーム形成をin vivoで解析した。また、継続時間を加味した隠れマルコフモデルに基づくヌクレオソーム配置の予測を行い、in vivoでの結果と比較して、ヌクレオソーム形成に及ぼすDNA配列特性の寄与について考察した。 次に、遺伝的疾患である進行性ミオクローヌスてんかん(EPM1)と筋強直性ジストロフィー2型(DM2)に関与するCCCCGCCCCGCGと CCTGリピート(各36 bp)のヌクレオソーム形成に及ぼす影響について解析した。その結果、CCCCGCCCCGCGリピートはin vivoでヌクレオソームの形成を強く阻害することを見いだした。また、出芽酵母ミニ染色体を用いて、ヌクレオソーム除去領域の形成におけるDNA配列の寄与について調べた。 以上、本研究において、新規のヌクレオソームマッピング法を確立して、マイクロサテライト配列のヌクレオソーム形成をin vivoで系統的に評価した。さらに、バイオインフォマティクス解析を加え、in vivoでのヌクレオソームポジショニングの機構におけるDNAの構造特性の寄与について統合的に考察した。現在、DNA配列によるヌクレオソームポジショニングの機構をさらに検証するために、in vitroでの再構成ヌクレオソームの解析を進めている。
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