研究課題/領域番号 |
26430188
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
石原 悟 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (00300723)
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研究分担者 |
石原 直恵(琴村直恵) 藤田保健衛生大学, 医学部, 研究員 (50571791)
原田 信広 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (00189705)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 転写 / クロマチン / ヌクレオソーム / プロモーター / SEVENS法 / CYP19 |
研究実績の概要 |
肝臓由来のHepG2細胞、卵巣由来のKGN細胞、胎盤由来のJEG-3細胞では、何れもCYP19遺伝子を発現するもののその発現量は大きく異なります。さらに、CYP19遺伝子には3つのプロモーターが存在し、細胞株によって異なるプロモーターが使われることが知られています。前年度までのRT-PCRを用いた解析から、各プロモーターの転写活性は様々であり、最も強い活性を持つプロモーターと弱いプロモーター間には10,000倍もの差があることが明らかになりました。 そこで、転写活性の強弱を反映する構造がCYP19遺伝子のクロマチンに見られることを期待し、今年度はヌクレオソームの凝集度を測定するSEVENS法を行いました。その結果、転写活性を持たないプロモーター領域のクロマチンでは、明らかにヌクレオソームの凝集度が大きくヌクレオソームが密に配置していました。その一方で、転写活性を持つプロモーターでは、ヌクレオソームが疎に配置したクロマチンであることが分かりました。重要な点として、この疎に観察されるクロマチンのヌクレオソーム凝集度は均一でなく、転写量が多いプロモーターほど凝集度が小さくなる傾向が見られました。 ヌクレオソームの結合数を推定するため、化学修飾の有無に関わらず反応する抗ヒストンH3抗体を用いてクロマチン免疫沈降法を行いました。その結果、前述のSEVENS法でヌクレオソーム凝集度が大きかったプロモーター領域はよく沈降され、ヌクレオソームのコンスタントな結合が確かめられました。一方、凝集度の小さかった領域では、期待された通りヌクレオソームの結合数が少ない領域がある一方で、必ずしも凝集度と一致しないところも見られました。これは、ヌクレオソームのDNA長さあたりの結合数よりも、SEVENS法で観察されるヌクレオソームの三次元配向がプロモーターの転写活性の強弱に重要であることを示唆します。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、HepG2細胞、KGN細胞、JEG-3細胞でのCYP19遺伝子のプロモーター領域をSEVENS法で調べることで、転写量とクロマチン凝集度の相互関係を示す1つの例を挙げることに成功しました。本研究課題の最終的な目的は全遺伝子に渡る統一的な「転写量を決めるクロマチン構造」を明らかにすることなので、CYP19遺伝子での観察は次年度に予定しているゲノムワイドな解析の良いモデルになることが期待されます。したがって、現在までの研究は、期待された通りの段階に達成していると考えられます。
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今後の研究の推進方策 |
本年度用いた3つの細胞株のうち、ENCODEなどのデータベースが充実したHepG2細胞について、ゲノム全体に渡る解析を行うことを予定しています。まず、SEVENS法を用いて、HepG2細胞のクロマチンをヌクレオソーム凝集度で分画します。各画分のクロマチンから精製したDNAを次世代シーケンサーで解析し、全遺伝子のプロモーター領域についてのヌクレオソーム凝集度を明らかにします。また、HepG2細胞のRNAを抽出してRNA-Seq法を行います。それらのデータの比較から、ヌクレオソーム凝集度にフォーカスを当てた「転写量を決めるクロマチン構造」が明らかにされることが期待されます。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度購入した試薬などの消耗品に、メーカーのキャンペーン価格対象になっているものが含まれており、予定よりも少ない金額で購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究に用いる試薬などの消耗品の購入に充てる。昨今の円安状況ゆえに海外より輸入する試薬が高騰する傾向にある。したがって、ここで生ずる値上げ分に対して、繰り越しされた該当助成金を利用する。
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