研究課題/領域番号 |
26430190
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
刑部 祐里子 徳島大学, 農工商連携センター, 特任准教授 (50444071)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / 環境ストレス / イオン輸送体 |
研究実績の概要 |
植物の環境ストレス応答時に機能する細胞膜局在性イオン輸送体は気孔閉鎖やストレス耐性に重要な機能を持っており、環境ストレス応答に関わるシグナル伝達により制御されている。本研究は、植物の環境応答能向上を目的としてこのような因子のゲノム編集による機能改変を目的としている。シロイヌナズナ環境ストレス応答シグナル伝達遺伝子や気孔開口に機能するプロトンポンプを標的遺伝子として、35SCaMVプロモーターにより発現制御されるCas9カセットを用いて変異導入が確認された植物体について、20-30個体程度のT1植物をまとめてDNA回収を行って、マイクロチップ自動電気泳動装置(MultiNA、島津製作所)および次世代シーケンサー(Hiseq、イルミナ)を用いて、植物体の発達ステージ別の変異導入効率の比較を行った。その結果、体細胞レベルの変異効率は平均で2.4-32.84%であり、植物体に導入したそれぞれのgRNAによって変異効率に差が見られた。さらに、それぞれのgRNAによって植物体のステージにおける変異パターンは変化した。どのgRNAについても、幼植物体における変異効率は高かったが、一方で配偶子世代では低いことが明らかになった。Miseqによるoff-target候補配列への導入効率を解析した結果、どのgRNAについてもoff-target効果は検出されず0%であった。高効率で変異導入が生じることがわかったgRNAについて、さらに、Cas9の発現プロモーターについて配偶子および茎頂で特異的に強く発現するプロモーターに変換しゲノム編集を行った結果、bi-allelic 変異が20%の効率で生じることが明らかとなった。以上から、高効率で次世代伝搬性の高いゲノム編集技術を確立することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度においては、植物の高効率ゲノム編集ツールを開発するために、gRNA設計が可能なwebツール、GFPレポーターの発現によるCas9発現レベルのモニタリングカセット、シロイヌナズナなどのin-planta法による形質転換系に最適化された配偶子および茎頂特異的発現プロモーターによるCas9発現カセットなどを構築した。また、変異導入効率、および変異配列の網羅的解析実験系として、マイクロチップ自動電気泳動装置(MultiNA、島津製作所)および次世代シーケンサー(Hiseq、イルミナ)による検出系を確立した。以上の技術基盤により、off-target効果がない、高効率の変異導入が可能となった。配偶子および茎頂特異的特異的発現プロモーターを用いたCas9ベクターにより得られた、bi-allelic 変異体は次世代を取得し、ホモ変異体を確立した。得られた新規の変異体についてその環境応答能などの表現型を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
1) 配偶子および茎頂特異的特異的発現プロモーターを用いたCas9ベクターにより得られた、bi-allelic 変異体は次世代を取得し、ホモ変異体を確立した。得られた新規変異植物体について、乾燥や高塩ストレス耐性能などの生理応答を解析し、変異によるストレス応答性への影響を解明する。 2) これまで標的遺伝子の変異体がないシロイヌナズナ近縁種や自然変異系統、イネやトマトなどの環境応答因子オルソログについて、ゲノム編集により新規変異導入を行う。
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