植物の環境ストレス応答時に機能する細胞膜局在性イオン輸送体は気孔閉鎖やストレス耐性に重要な機能を持っており、環境ストレス応答に関わるシグナル伝達により制御されている。本研究は、植物の環境応答能向上を目的としてこのような因子のゲノム編集による機能改変を目的としている。シロイヌナズナ環境ストレス応答シグナル伝達遺伝子や気孔開口に機能するプロトンポンプを標的遺伝子としてCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集を行った。Cas9の発現プロモーターについて配偶子および茎頂で特異的に強く発現するプロモーターに変換しゲノム編集を行った結果、オフターゲットに変異導入の無いbi-allelic 変異体が高い効率で得られ、新規のシロイヌナズナ変異体alleleを作製することが可能となった。次に、得られたCRISPR/Cas9変異体の水分ストレス環境への応答性について生理学的に明らかにした。通常の生育条件において、サーモグラフィーによる非破壊計測で葉面温度を測定したところ、CRISPR/Cas9変異体は野生型より高い葉面温度を示し、通常の生育条件においても気孔が閉鎖する傾向があることがわかった。さらに、変異体では、植物ホルモン、アブシジン酸(ABA)に対する気孔の閉鎖能や葉の水分損失速度が高まっていた。以上のことから、新規に作製したCRISPR/Cas9プロトンポンプ変異体は水分ストレス応答が向上していることが明らかになった。
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