• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2014 年度 実施状況報告書

高温ストレス下で光合成機能を維持する化合物の同定とその作用機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 26430191
研究機関独立行政法人理化学研究所

研究代表者

明賀 史純  独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (10342859)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード植物ゲノム / 葉緑体 / 光合成 / 高温ストレス / シロイヌナズナ
研究実績の概要

本研究は植物の高温ストレスに対する適応機構の解明と高温下での光合成機能維持の付与を目的とする。本年度はクロロフィル蛍光を指標としたハイスループットなケミカルスクリーニングを行い、高温ストレスが及ぼす光合成電子伝達への負の影響を抑制する天然化合物の同定を試みた。96穴マルチタイタープレートの各ウェルに植物育成寒天培地と異なる天然化合物とを加えた培地を作成し、その上に5-10粒となるようにシロイヌナズナ野生型種子を播いた。良好に発芽させるために低温・暗所下で3日間放置して休眠処理を行った後、植物インキュベーターへプレートを移し通常育成条件下で10日間生育させた。10日間育成した幼植物体を光照射下で37℃と40℃との2つの条件で3時間高温ストレス処理を行った。短時間暗所に置いた後、植物育成プレートをCCDカメラによる二次元クロロフィル蛍光測定装置(PSI社)を用いて96穴全ての植物体のクロロフィル蛍光を測定した。取得したクロロフィル蛍光データから光合成パラメーター値を算出し、高温ストレス処理前と処理後で他の化合物を加えた植物体とは異なる光合成パラメーター値の変化を示した「ヒット化合物」の有無を調べた。1回だけのスクリーニングによる植物の生育誤差などを排除するために同じ実験を3回繰り返し、大きく数値に変化が見られた5つのヒット化合物の候補を得た。ヒット化合物が所属するグループの中の類縁化合物を用いて2回目の活性試験を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画書で記載した年度計画に則り、96穴マルチタイタープレートプレートに天然化合物ライブラリー RIKEN NPDepoのパイロットプレート(376種類の代表的な化合物からなる)から1μlづつ分注し、ここに植物育成寒天培地を加えて多検体ケミカルスクリーニングプレートを作製し、ケミカルスクリーニングを開始した。まず本プレートで育成させた時のシロイヌナズナ幼植物体の高温ストレスの影響を調べるために温度条件を検証した。化合物がない状態のもと本ケミカルプレート中で育成した植物体を用意し、多段階の温度でどのように光合成パラメーターが変化するのを調べた。これにより温度の上昇につれてこれまで言われているようにFo値の上昇がみられる事が確認できた。一方、ΦPSII値は温度が42℃を超えると急激な値の低下が観察された。さらにNPQ値は37℃までゆっくりした上昇したのち、42℃を超えると急激な値の低下を示した。本条件検討により、植物に与える温度条件と観察するべき光合成パラメーターを決定することが出来た。これに続くCCDカメラによる二次元クロロフィル蛍光測定を用いたスクリーニングにより速やかに1次スクリーニングを行うことができ、いくつかの候補化合物を得ることが出来た。

今後の研究の推進方策

現在1回目のヒット化合物が所属するグループの中の類縁化合物を用いて2回目の活性試験を行い、さらにヒットした化合物で3回目の活性試験を行う、というように複数回で連続して目的の活性を持つ化合物を絞り込む予定である。その後ヒット化合物が影響を与える光合成電子伝達系の詳細な標的部位をDual-PAMクロロフィル蛍光測定装置(Waltz社)を用いて解析し、⊿A518吸収変化測定(ECS測定)や⊿A810吸収変化測定(P700測定)等を行うこととする。それと同時にRNAブロットにより高温ストレス下での化合物の添加の有無による光合成蛋白質の転写産物の蓄積変化を調べる。また葉緑体チラコイド膜タンパク質を抽出し、BN-PAGEによる光合成蛋白質複合体の解析やPSI-A/B, D1, Lhca1, Lhcb1, Cyt f, CF1-α, OE23, OE33などの光合成蛋白質の特異抗体を用いたイムノブロットを行い、高温ストレス下での化合物の添加の有無による光合成蛋白質の蓄積変化を調べる。これにより光合成電子伝達系路上のヒット化合物の標的となっているタンパク質または代謝物を推測する。

次年度使用額が生じた理由

今年度中に光合成電子伝達系の抗体を購入しイムノブロットをする予定であったが高温ストレスの条件検討に予想以上に時間がかかってしまったことから物品費を節約できたために次年度への繰越額が若干生じた。

次年度使用額の使用計画

次年度には、高温処理中の光強度を正確に測定するための光量子計と植物体の種子を保存するための種子保存デシケーターとを各1台購入する予定である。光量子計は、均質な植物育成に必要であることや高温ストレス処理を行う際に光の点灯の有無が光合成能力の低下を促進することから、光環境の正確な把握を必要とするからである。また種子保存デシケーターは種子保存状態を改善することで不均一な発芽を引き起こさせないようにするためである。また葉緑体のチラコイド膜蛋白質の機能解析に必要な土やプレート培地といった植物育成用物品、DNA・RNA・蛋白質抽出試薬、電気泳動用試薬、RNAブロットやqRT-PCR用試薬・イムノブロット用試薬、などの消耗品を購入する。その他経費は英文校閲費用や論文の投稿料に使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Bending of Protonema Cells in a Plastid Glycolate/Glycerate Transporter Knockout Line of Physcomitrella patens.2015

    • 著者名/発表者名
      Nakahara J, Takechi K, Myouga F, Moriyama Y, Sato H, Takio S, Takano H
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 10 ページ: e0118804

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0118804

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] A combined immunoprecipitation and mass spectrometric approach to determine OHP1-interacting partners.2015

    • 著者名/発表者名
      Myouga F, Takahashi K, Tanaka R, Nakagami H, Shinozaki K
    • 学会等名
      The 56th Annual Meeting of the Japanese Society of Plant Physiologists.
    • 発表場所
      Tokyo University of Agriculture, Japan
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-18
  • [学会発表] Landscape of the lipidome and transcriptome under heat stress in Arabidopsis thaliana.2015

    • 著者名/発表者名
      Higashi Y, Okazaki Y, Myouga F, Shinozaki K, Saito K
    • 学会等名
      The 56th Annual Meeting of the Japanese Society of Plant Physiologists.
    • 発表場所
      Tokyo University of Agriculture, Japan
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-18
  • [学会発表] Search of the chemical compounds which alleviates thermal damage of photosynthetic electron-transport systems.2014

    • 著者名/発表者名
      Myouga F, Shinozaki K
    • 学会等名
      25th International Conference on Arabidopsis Research
    • 発表場所
      University of British Columbia, Vancouver, Canada
    • 年月日
      2014-07-28 – 2014-08-01
  • [備考] 機能開発研究グループ

    • URL

      http://genediscovery.riken.jp/

URL: 

公開日: 2016-05-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi