研究課題/領域番号 |
26430192
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 亮 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50301106)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 決定理論 / ベイズ統計 / 遺伝情報 |
研究実績の概要 |
ゲノム上オフと多様なオミックス系バイオマーカー情報とを活用する個別化医療の実現を念頭に置き、不確かさの避けられない情報を用いた臨床判断に関する研究である。 初年度の情報収集として、マルチアームド・バンディット理論の新旧の知見を網羅的にサーベイし、特に、臨床試験・臨床判断における活用の深浅について検討をした。前世紀後半から10-20年間に、比較的盛んに研究がなされたが、21世紀を前に、不活発となったものの、21世紀に入り、再度、新たな研究がなされている傾向が認められた。この再帰には、計算機環境の変化が背景にあると認められ、我々の研究が時宜を得たものであることが確認できた。また、新規知見の収集に鋭意努力し、我々の研究がより、実りあるものとなるよう、細かい研究軌道修正を行うことが適当であると判断された。 理論・計算機実装においては、個別化医療上、不可避となると予想される、少標本サイズでの判断支援を念頭におき、ベルヌーイ事象を想定した二者択一判断分岐に関する理論的考察並びに、そのシミュレーション実装を初年度に実施した。シミュレーション実装にあたっては、少標本における正確確率計算のためのデータ構造を考案し、2種類のコンピュータ言語により実装した。また、少標本から多標本へ移行した場合の評価にそなえモンテカルロ法も同様に実装した。 予備的な結果として、劣選択肢への誤った収束の出現が、非確率的選択戦略によって引き起こされること、それを回避するためには、集団中にマルチアームド・バンディットで言うところのexplorerが少ない割合であってもよいので、存在することが重要であることが確率的に示された。また、選択肢の生起確率に関するプライアーが、選択戦略の効果的な戦略に影響することが示された。この途中経過までを本年夏の国際学会で発表予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に挙げる、3つの理由により、順調な進展であると考える。 (1)関連研究の網羅的サーベイの結果、われわれの研究内容を補完する可能性のある研究が海外等で実施されていることが確認されたこと。(2)べルヌーイ事象に関する2者択一という限定した条件ではあるが、正確確率法とシミュレーション法の2種類につき、2言語での実装が済んだこと。(3)予備的な研究結果が、国際学会での発表の機会を与えられたこと。 異なる決定条件への拡張については、手つかずであるが、限定した条件において、重要な知見が得られつつあることから、その面での進展のなさは、十分に補われていると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度の当初予定としては、医療現場での選択パターンへの拡張のための理論検討と計算機シミュレーションとを開始する、という計画であったが、現時点では、最も基礎的な条件であるベルヌーイ・2者択一において、興味深い知見が得られていることから、この限定条件について、より詳細な理論検討ならびにシミュレーション評価を行うこととする。また、それを進めるにあたっては、アルゴリズム・データ構造のチューニングを併せて行うことが適切であるという予備的結果も出ているので、その点にも時間をかける方針である。さらに、中間成果を国際学会で発表する予定だが、その内容は、論文発表にそのまま進めることも可能な内容であるので、学会発表における情報交換の後、適否に応じて、論文発表を考慮する。その場合には、論文発表と併せて、アプリケーションの公開をする必要が生じることから、そこに時間・経費などを用いる可能性もある。この方針変更は、医療現場における決断行為の多くを、二者択一の連鎖とみなすこともできることに照らして、大きな後退ではないと判断できる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
少額端数につき、繰り越しての使用が適切と考えた。
|
次年度使用額の使用計画 |
その他消耗品として使用予定。
|