本研究では、個別化医療・医療判断の情報化という時代の流れの中で、いかにきめ細かく情報を利用して判断・決断に活用していくかというテーマと扱った。本研究で扱った決断状況は、比較的少数の患者群が時系列にてタンデムに決定を繰り返し、その過去の決定の結果の情報が未来の決断者に開示されているというものであり、問題設定の本質的な部分を明確にするために、二値型の帰結を持つ、二つの選択肢を対象とした。この状況において、用いられる情報は選択肢のうちのどちらを選ぶべきかについて不確かさを伴うものであり、マルチバンディット問題の単純な場合である。マルチバンディット問題と異なるのは、各決定ステップにおける利得が、当該決断者にとっての個人的利得のすべてであることである。われわれは、この状況において、いかに、個人が主体的な決断をするという満足を確保し、かつ、集団全体として、より好適な結果の集合を得るかについて、確率過程の観点から調べた。 結果として、確定的決断を許さない情報が与えられているときに、個々人の決断に多様性があることが重要であること、また、特に、与えられた限られた情報に基づく期待値そのものによって選択するよりも、楽天的な判断をすること、楽天的な判断をする個人を集団内に有することの有益性を明らかにした。また、そのような決断上の多様性には、極端ではない多様性がもっとも適しているらしいことも示唆された。 本研究成果は、複数の国際・国内学会にて発表し、現在国際学術誌に投稿中である。
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