研究課題/領域番号 |
26430195
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
細道 一善 金沢大学, 医学系, 准教授 (50420948)
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研究分担者 |
井ノ上 逸朗 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 教授 (00192500)
椎名 隆 東海大学, 医学部, 准教授 (00317744)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 同種造血幹細胞移植 / キラー細胞免疫グロブリン様受容体 / 組織適合性抗原 |
研究実績の概要 |
近年、組織適合性抗原HLA型に加え、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)型を適合させることが移植の成功の鍵であることが明らかとなっている。ところが、KIR領域のゲノム配列決定やそれに基づく多型解析法の開発のニーズは高いにも拘わらず、現在のところ全く報告がないのが現状である。本研究では、”クリニカルシーケンス”の実用例の一つとして、次世代シーケンサー(NGS)によるKIRハプロタイプのタイピング手法の確立することにより同種造血幹細胞移植(HSCT)の成績の向上を目指す。さらに、この手法を基盤にしたKIRハプロタイプの集団遺伝学的解析、霊長類KIR領域の比較ゲノム解析ならびにKIRと関連分子の相互作用の機能解析から免疫の進化を含めたKIR関連免疫システムの理解を目的とする。 本研究課題は、NGSを用いたKIRハプロタイプのタイピング手法の確立を一つの基盤とする。手法開発はNGSライブラリ調整法、解析アルゴリズム開発、タイピング結果の精度確認の3段階で進め、特にNGSライブラリ調整法と解析アルゴリズムは相互に最適化しながら進める。迅速で安定した手法確立後は、複数の課題に対してサンプルの解析を進めるが、 1. NGSを用いたKIRハプロタイプのタイピング手法の確立、2. 臨床応用を目指したKIR型およびHLA型と同種HSCT成績との関連解析、 3. KIRハプロタイプ頻度の集団遺伝学的解析、 4. 霊長類KIRハプロタイプの比較ゲノム解析による免疫システム進化の解明、の4つのテーマを軸に進める。これまでの研究実績として、NGSを用い新規アレルの遺伝子配列も検出可能な短時間かつ低コストなKIRハプロタイプのシーケンス手法を確立した。本法は簡便かつハイスループットな手法開発を実現しており、96ウェルプレートにて磁気ビーズによりモル濃度を均一化することが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに新規アレルの遺伝子配列も検出可能な短時間かつ低コストなKIRハプロタイプのシーケンス手法を確立した。基盤となる技術が確立されたことから、同種造血幹細胞移植成績に注目した研究デザインを速やかに進めることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として、実際に移植に用いられた臍帯血バンクの移植ペア症例の解析を進める。 本研究課題が対象とするKIR領域は医学的に重要な領域の一つであり、急性骨髄性白血病(AML)に対する治療のうち同種HSCTの成否と関連することが報告されている。同種HSCTで適合性を決定するも最も重要な遺伝子としてはHLAが知られている。すなわち、同種HSCTや臓器移植では、自分のHLAのタイプに合わないものはすべて非自己と認識して攻撃を始めてしまうため、HLAの適合性が重要であり、移植においてHLA型を適合させることが必須である。近年HLA型に加えKIR型を適合させることが移植の成功の鍵であることが明らかとなっている。同種HSCTはNK細胞の反応性に対する感受性が高く、ドナー由来の活性化 KIR 遺伝子はAMLに対する同種HSCTでの再発を予防や死亡率の低下と関連する。同種HSCTの成功のもう一つの鍵となるKIRについてもNGSを用いた迅速なタイピング手法の開発が求められているが、KIR領域のゲノム配列決定やそれに基づく多型解析法の開発のニーズは高いにも拘わらず、現在のところ全く報告がないのが現状である。今後の研究により同種HSCTにおけるKIRハプロタイプの効果を明らかとし、同種HSCTの成績の向上を目的としたクリニカルシーケンスとしての実用化を目指す。
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