研究課題
申請者は、以下の研究計画を実施している。(1)ヒト集団ゲノムデータを用いて、解析困難な領域の特徴を明らかにする。また、(2)それらの領域のゲノム配列を読み取り長の長い第3世代シークエンサーを用いて決定することにより、解析困難領域の遺伝的多様性を解明することを目的としている。解析困難領域を選出するために、ICGC (International Cancer Genome Consortium)により解析された日本人216人の正常組織(血液)由来のゲノムシークエンスを用いて、SNV(一塩基多様性)とindel(挿入欠失)を検出した。また、シークエンス深度を全サンプルについてカウントし、シークエンス深度が浅い領域、深い領域を網羅的に明らかにした。これらのデータを用いて、標準ゲノム配列内の解析困難領域の同定及び特徴の抽出を進めている。上記に加えて、極めて多様性が高く解析が困難である領域と、非標準ゲノム配列の第3世代シークエンサーを用いた配列決定も行っている。第2世代シークエンサーにより配列決定されたサンプルのデータから、標準ゲノム配列にマッピングされなかったリード配列を選出し、de novoアセンブルを行い、非標準ゲノム配列を構築した。これらの配列上に、DNA濃縮アレイのプローブを作成し、DNAをcaptureし、第3世代シークエンサーを用いた配列決定も行った。データは得られており、現在はデータ解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
非標準ゲノム配列と解析困難領域を選択し、プローブを作成して第3世代シークエンサーによるシークエンスを行った。解析困難領域として、HLA (Human Leukocyte Antigen), CYP (Cytochrome P450), Killer-cell immunoglobulin-like receptor (KIR)、非標準ゲノム配列(約3Mbp)、HBV (B型肝炎ウイルス)を選択した。それらの領域について、Agilent社のSure select DNA 濃縮キットのプローブを候補領域を2回カバー可能な量でデザインし、作成を行った。また、ミトコンドリア領域のゲノム配列をエラー補正のための正解データとして用いるため、プローブに加えた。HLAやKIRについては、多型性が極めて高いため、EBI (The European Bioinformatics Institute)が公開している多型データベースより、複数のハプロタイプを取得し、共通性が高い領域にプローブをデザインした。HBVは、一般的には解析困難であるとの認識はされていないが、我々の肝臓癌を対象とした研究で、HBVのヒトゲノムへの挿入が検出されており、これらのサンプルのHBV挿入配列の全長を明らかにするため、プローブに加えた。予算が限られているため、ゲノムDNAを7サンプルずつ混合し、Captureを行い、第3世代シークエンサー(PacBio)用のライブラリを作成した。長いゲノム配列のCaptureを行うために、ゲノムDNAを6kbpに断片化し、該当するサイズのゲノムDNAをゲルから切り出して生成し、実験に用いた。作成したライブラリをPacBioシークエンサー及び、第2世代シークエンサー(Hiseq2000)用いてシークエンスを行い、データを得た。
現在は、データ解析を行っている。第3世代シークエンサーはエラー率が高く(約15%)、そのままでは解析に用いることは困難である。そこで、リード長は短いが、比較的安価に大量データが得られる第2世代シークエンサーを用いたシークエンスも行い、2種類のデータを併用した解析が一般的に行なわれている。これまでに、様々な解析手法が提案されているが、本研究のデータでは、複数サンプルを混合しているため、既存の方法は不適切であると考えた。最適な手法を探索するため、正解データを構築し、それに基づいて最適な手法やパラメーターを決定しようと考えた。正解データとして、ミトコンドリアの配列にマッピングされた第3世代シークエンサーのリードと、第2世代シークエンサーのリードを用いた。マッピングプログラムとして、多型性が高い領域に対するマッピングを得意とするSHRiMP2ソフトウエアを選出した。様々なパラメーター(seedのパターンと長さ、mismatch penalty、gap open penalty、gap extension penalty)で、第3世代シークエンサーのデータに対して、第2世代シークエンサーのリード配列をマッピングし、マッピング率の比較を行っている。精度が高い補正法を構築した後に、全データに対して補正を行い、遺伝的多様性の解析を行う。
実験は概ね順調に進んでいたが、情報解析が困難であり、結果の実験的検証に至らなかった。
情報解析を行い、実験的検証に使用する。また、論文をまとめ、論文掲載料としても使用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Nat Genet
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DOI: 10.1038/ng.3547
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doi:10.1038/ncomms10001
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doi: 10.1038/onc.2015.90.
https://sites.google.com/site/fujimotoakihironopeji/home/fa-biao-lun-wen