研究課題/領域番号 |
26430203
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
淺野 玄 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (30377692)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 外来種 / 特定外来生物 / アライグマ / マングース / 避妊ワクチン |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は,野外で実用化しうる野生化アライグマとマングースに対する避妊ワクチン開発である。実用的なワクチン開発は本申請研究期間の3年で完了できるものではなく,継続した研究が必要と考えている。平成26年度は,卵透明帯蛋白質-精子卵結合部位の塩基配列を参考に合成した2種類のペプチド(A,B)をマングース生体雌に免疫し,次のような実験を行った。免疫処置群6頭(ペプチドA,B各3頭(A-1~3およびB-1~3))に2週間間隔で4回皮下投与し,対照群5頭にはペプチドの代わりにPBSを投与した。採血は,免疫前および3,4回目の免疫時と最終免疫1週間後に実施し,その後に安楽殺して卵巣を採取した。安楽殺をせずに継続飼育をしている2頭(A-1およびB-2)では,さらに約3ヶ月後,7ヶ月後,10ヶ月後にも採血を行った。これらの材料を用いて,血液中の抗体価をELISA法にて経時的に評価した。また,免疫による卵巣への組織学的な障害の有無を調べるため,卵巣の組織学的解析をHE染色にて行った。その結果,A群では投与開始時およびコントロールと比較して概ね経時的な抗体価の上昇が見られ,B群ではB-2は増加傾向が認められるがその他は変化や増加傾向を認めなかった。よって,ワクチン抗原候補としてペプチドAはBよりも有力である可能性が示唆された。しかし,今後,ELISA法の改良や継続飼育個体の抗体価の測定による詳細な解析が必要と考えている。免疫個体の卵巣組織学的解析では,A投与個体でコントロールと比較して卵透明帯に形態学的な変化は認めず,副作用となる卵巣への組織学的損傷は起こさない可能性が示唆された。今後は,例数および電子顕微鏡など,より詳細な組織学的解析を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マングースについては,飼育個体を用いた実験が順調に行えているが,アライグマについては飼育個体の確保および飼育実験に至っていない。これは,本種が特定外来生物であり,学術研究目的であっても捕獲や飼育に関する制限が大きいことにも起因している。また,本種に対する避妊ワクチン抗原候補の2種類の合成ペプチドについては,他種との免疫原性で交差性があることが判明し,種特異性が確保されていないため,再設計を余儀なくされている。今後,種特異性のある抗原候補を再検索して,飼育個体を用いた実験を行いたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マングースについては,飼育個体を用いた実験を継続する。すなわち,経時的に採血を行い,免疫後の抗体価の推移を観察する。また,卵巣の組織学的解析では,免疫染色や電子顕微鏡による観察を行い,免疫効果の判定や免疫に伴う組織損傷の有無を詳細に検索する。一方,アライグマについては,ワクチン抗原候補の再設計を含めた,実験系の見直しをはかる。場合によっては,新たな抗原候補となる合成ペプチドを作成し,これをウサギに免疫して抗体を精製する。また,アライグマと同所的に生息する他種の卵巣をもちいた免疫染色により,新たに設計した合成ペプチドの種特異性についても検討をする。これらがクリアされれば,速やかに飼育アライグマを用いた免疫実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた実験が計画通り進まなかったこともあり,平成26年度の研究費使用は予定よりも少ない支出となった。その主な理由として,アライグマの飼育に際し,飼育棚やケージなどの設備備品を平成26年度に使用する予定であったが,アライグマの飼育実験が実施できていないことにより,これらが未購入であるためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度は飼育実験関連の設備備品費(アライグマの飼育ケージや棚)の執行はできなかったが,次年度以降,準備が飼育実験の準備が整い次第,設備備品を購入したいと考えている。
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