研究実績の概要 |
生殖機能細胞をエネルギーフリーで保存できる新規な真空乾燥・室温保存法を開発することを目的として、本研究を実施した。 【方法】種々の濃度のトレハロースを含むTris-EGTA (TE) あるいはPB1, M2, TE及びmCZB-hepes単独あるいは0.1Mトレハロースを含む保存液にB6D2F1マウス由来2-細胞期胚あるいは桑実期胚を浸漬し、4~24時間室温下で乾燥・保存した。保存後、ミリQ水、M2, 0.3M スクロースあるいは0.1Mトレハロース/TEのいずれかを保存液中に添加した。その後、胚を回収し、培養することで胚の発生を確認した。 【結果および考察】2-細胞期胚を用いた保存では、0.1M, 0.5M, 1.0M及び1.5Mトレハロース/TEにて4~24時間室温下で乾燥・保存後、回収されたすべての胚で発生は認められなかった。また、桑実期胚を用いた保存では、0.1Mトレハロース/TE中にて胚を4, 6及び24時間保存後、0.3Mスクロース等を添加し、回収したところ、各々23~43%, 31~50%及び0%が胚盤胞に発生した。次いで、PB1, M2, TE及びmCZB-hepesで桑実期胚を室温下にて4, 6, 24及び48時間保存し、胚を回収した後、培養したところ、各々90~100%, 78~89%, 62~77%及び17~33%が胚盤胞に発生した。更に、これらの保存液に0.1Mトレハロースを含む保存液にて桑実期胚を室温下で6, 24及び48時間保存し、胚を回収した後、培養したところ、各々80~100%, 43~86%, 17~33%が胚盤胞に発生した。以上の結果から、室温保存する場合、2-細胞期胚より桑実期胚の方が、保存性が良好な事、桑実期胚は48時間の室温保存でも胚盤胞に発生する事、並びに胚の室温保存におけるトレハロースの保護効果は、認められない事がわかった。
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