研究課題/領域番号 |
26440001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高畑 信也 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50381588)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヘテロクロマチン / HP1 / FACT / Swi6 / ヒストン / ヒストンシャペロン / クロマチン / クロマチンリモデリング |
研究実績の概要 |
FACT複合体は転写調節因子と相互作用して染色体上の極めて広い範囲でクロマチン制御を行う。申請者らがFACT複合体とSBF/MBFの相互作用を発表(Takahata S. et al, EMBO J, 2009)して以降、同様の報告が多くなされている。我々の先行研究もまた同様にFACT複合体と結合する因子が複数同定済みであり、本研究ではこれらの因子がFACT複合体と結合する事によって生まれる生命現象の分子レベルでの解明を目指す。本課題では以下に取扱う独立したテーマ3つを推進中である。 1. 核内レセプター様転写制御因子Pdr1による薬剤排出機構:核内レセプターとして薬剤排出系に重要な役割を果たすPdr1にFACT複合体が結合する事を試験管内実験にて証明した。また遺伝学的解析からPdr1がFACTと結合する事で薬剤排出ポンプをコードする遺伝子群の転写活性化を調節する事に加えて、薬剤排出後に転写を抑制する機能を持つ事も明らかにした。 2. ヘテロクロマチンタンパク質HP1によるヌクレオソーム安定化機構:分裂酵母のHP1ホモログSwi6がSpt16と相互作用する事を発見し、Spt16のどのドメインと結合しているかを試験管内実験によって明らかにした。 3. 転写制御因子Fip1によるヒストン遺伝子転写制御機構:FACTに結合する因子群を質量分析によって網羅的に同定して、その中からFip1を優先的に解析した。はじめにfip1遺伝子破壊株を作製して遺伝学的解析を行ったところ我々の持つFACT変異株と似た表現型を示す事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題のテーマ3つとその達成度を示す。 1. 核内レセプター様転写制御因子Pdr1による薬剤排出機構:核内レセプターとして薬剤排出系に重要な役割を果たすPdr1にFACT複合体が結合する事を試験管内実験にて証明した。また遺伝学的解析からPdr1がFACTと結合する事で薬剤排出ポンプをコードする遺伝子群の転写活性化を調節する事に加えて、薬剤排出後に転写を抑制する機能を持つ事も明らかにした。 2. ヘテロクロマチンタンパク質HP1によるヌクレオソーム安定化機構:分裂酵母のHP1ホモログSwi6がSpt16と相互作用する事を発見し、Spt16のどのドメインと結合しているかを試験管内実験によって明らかにした。 3. 転写制御因子Fip1によるヒストン遺伝子転写制御機構:FACTに結合する因子群を質量分析によって網羅的に同定して、その中からFip1を優先的に解析した。はじめにfip1遺伝子破壊株を作製して遺伝学的解析を行ったところ我々の持つFACT変異株と似た表現型を示す事が明らかとなった。 1.核内レセプター様転写制御因子Pdr1とFACTが共役した薬剤排出機構に関しては研究データの一部が論文として発表済みである。特に新規性が高い発見としてFACTに依存した薬剤排出遺伝子のプロモーター抑制機構の発見である。2. ヘテロクロマチンタンパク質HP1によるヌクレオソーム安定化機構ではSpt16のリコンビナントタンパク質発現精製系、ヘテロクロマチンタンパク質Swi6発現系を立ち上げて試験管内での結合実験系の確立に成功した部分が特筆に値する。今後はタンパク質間相互作用に重要なアミノ酸を決定して生体内にその変異を戻した時の表現型を詳細に解析する必要がある。3. 転写制御因子Fip1によるヒストン遺伝子転写制御機構については表現型解析が一通り終了しており、今後はタグの導入とChIPアッセイを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本課題のテーマ3つと今後の推進方針を示す。 1. 核内レセプター様転写制御因子Pdr1による薬剤排出機構:本研究で我々は出芽酵母を用いた解析を行ってきたが、出芽酵母の転写調節因子Pdr1がメインターゲットとするSRBメディエーター構成因子Gal11は出芽酵母に特化したようなタンパク質でありこの薬剤排出システムにとって生物学的に普遍性があるとは言い難い。そこで今後はより高等生物に近い分裂酵母を用いて薬剤排出に関わる核内レセプター様転写因子の解析に移行する。 2. ヘテロクロマチンタンパク質HP1によるヌクレオソーム安定化機構:試験管内でFACT構成因子Spt16とSwi6の結合を調べる系の構築に成功したので今後はSpt16タンパク質内でどこがSwi6と結合するのかの限局を行う。またその後、両者の結合を切るようなSpt16の点変異を同定して生体内で発現させたときの表現型を解析してヘテロクロマチン形成・維持におけるFACTの役割を探る。 3. 転写制御因子Fip1によるヒストン遺伝子転写制御機構:Fip1にエピトープタグを導入してChIP法によってヘテロクロマチン上、もしくはヒストン遺伝子プロモーター上への結合を調べる。加えて細胞周期同調系を活用してどのタイミングで特定遺伝子座上への結合を調べる。
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