研究課題/領域番号 |
26440002
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
石見 幸男 茨城大学, 理学部, 教授 (80159772)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヘリカーゼ / タンパク質リン酸化 / タンパク質集合 |
研究実績の概要 |
1.MCM2と3の核移行制御およびMCM2-7複合体形成とMCM4変異の関係性:MCM2と3の局在を非同調細胞で調べると、両者とも間期では核への局在化が観察された。MCM3の核局在化配列と想定される部位の2アミノ酸を置換した変異体でも核局在性は変わらなかった。MCM2についても同様の解析を行い、想定される核局在化配列の2アミノ酸置換MCM2は野生型MCM2と同様に核局在性を示した。今後は、特にMCM2を中心に、核局在化配列と思われる部位を除去した部分欠損型MCM2を作成し、核局在化に必要な部位を特定する。ヒトがん組織細胞で検出された点変異MCM4(G364R)を含むMCM4/6/7複合体を調製し、ヘリカーゼ活性を測定したところ、野生型の1/2程度の活性を示した。この活性低下の原因は、DNA結合性やATP分解活性以外の機能不全に起因すると考えられる。よってDNA上を移動する段階で不都合がある可能性が考えられる。 2.DNA複製タンパク質の集合とCDKの役割:ヒトTOP-BP1、RECQL4そしてTRESLINを精製した。TOP-BP1タンパク質固定化ビーズを作成し、RECQL4とTRESLINとの結合を調べたところ、ビーズとRECQL4との結合が認められたが、RECQL4にCDKによるリン酸化を誘導した場合でも、その結合に変化は見られなかった。一方で、TRESLINのビーズへの結合は、CDK存在化と非存在下において、いずれも場合も認められなかった。 3.MCM2-7複合体のDNAからの解離を含むMCM4リン酸化の役割:これまでの6変異MCM4に加え、それらの部位の中の1,2,3と5変異体を作成し、加えて6変異に、88と94位A変異を加えた8変異MCM4を作成し、MCM4/6/7複合体のDNA結合性をCDK共存化で調べた。その結果、変異数を増やすに従い徐々に、CDKによるDNAからの解離に複合体は抵抗性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画3項目(1.MCM2と3の核移行制御およびMCM2-7複合体形成とMCM4変異の関係性,2.DNA複製タンパク質の集合とCDKの役割, 3.MCM2-7複合体のDNAからの解離を含むMCM4リン酸化の役割)について、ほぼ予定通りに研究が進行した。各項目について最終的に結論はまだ得られていないが、それを導き出すための準備が完了しつつある。また、懸案の課題についての見通しが、これから見直しが必要な項目も含め、見えてきている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
MCM2の核局在化の解析を推進するとともに、そのN末端領域に存在するヒストンH3結合活性の意味についても解析する。ヒトがん組織細胞由来の変異MCM4の機能解析についても、さらに例数を増やし、そのMCM4/6/7ヘリカーゼ機能への影響と細胞DNA複製への影響を調べる。CDK依存のタンパク質集合については、MCM10を含むMCM相互作用因子とMCM6との結合に焦点を変えて解析する予定である。CDKとMCM4リン酸化については、各リン酸化部位の意味について、特に3位リン酸化とDNA複製との関係、責任をもつキナーゼの特定などを中心に解析し、加えて、リン酸化部位変異MCM4の細胞内発現により、リン酸化の意味について細胞レベルで解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額は消耗品費として67円ということで実質的に使用することが難しかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の使用計画の消耗品費中に、残額を含めて使用する。
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