1.MCM3の核局在化とMCM2-7複合体形成:がん細胞由来のMCM4変異で、MCM box内で起こったG486D変異のMCM2-7複合体形成に対する影響を調べた。隣接するサブユニットであるMCM6とMCM7とからできるMCM4/6/7の6量体形成の効率が、野生型MCM4の場合に比べ、本変異MCM4では、大変に低下することが分かった。そのためにMCM4/6/7のDNAヘリカーゼ活性の測定に至らなかった。その原因の一つはMCM7との結合の低下であった。ヒトHeLa細胞で本変異MCM4を発現させると、異常な核形態を示す細胞が検出された。変異MCM4の存在がMCM2-7複合体形成に負に働き、DNA複製が正常に進まなかった可能性が考えられる。 2.DNA複製タンパク質の集合とCDKの役割:近年MCM相互作用因子として同定された、低酸素誘導因子(HIF-1A)とMCM2-7との結合について調べた。HIF-1AはすべてのMCMサブユニットに結合できるが、その中で特にMCM3とMCM5との結合性が強いことが分かった。さらに、断片化したMCM3とMCM6との結合を調べる実験から、HIF-1AはMCMドメインを含むC末端領域に親和性があることが分かった。 3.MCM2-7複合体のDNAからの解離を含むMCM4リン酸化の役割:リン酸化受容部位を欠いたMCM4を含むMCM4△N/6/7複合体については、DNAヘリカーゼ活性と一本鎖DNA結合能に低下が見られた。このMCM4領域に存在するCDKリン酸化受容部位の6か所を、リン酸化を模擬するグルタミン酸に置換した変異MCM4の性質を調べた。本変異MCM4は、MCM4/6/7の複合体形成が不調で、変異MCM4の分解も起こっていることが分かった。つまり、CDKのよるMCM4リン酸化はMCM複合体を不安定化する可能性が考えられる。
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