研究課題/領域番号 |
26440016
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
尾瀬 農之 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80380525)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
JAK-STATシグナル伝達経路に属するSTAT3およびSTAT5の顕著な活性化と,細胞異常増殖との相関が認められている.細胞生物学実験の結果を踏まえ,乳がん細胞株におけるSTAT3/5分子の活性化はアダプター分子STAP2とキナーゼBrkの協調作用による寄与が大きいと考え,STAP2が担う具体的な分子メカニズムを明らかにする.JAK-STATシグナル伝達系はレセプターに会合するJanus kinaseと,その主要な基質である転写因子STATにより構成される. 活性状態のBrk, STAP2, およびSTAT3を調製することには前年度までに成功していた.今回はさらにSTAT1やSTAT2に対するBrkのリン酸化活性測定をおこない,Brkの基質選択性に関することや,選択性に対するSTAP2の関与を調べた.また,これまでBrkおよびSTAP-2のX線小角散乱(SAXS)はバッチ法によりおこなっており,単量体と二量体が存在するため完全に単分散のサンプル測定をおこなうことができず,ギニエ解析やP(r)関数からは慣性半径の値が大きく出てしまっていた.そこで,ゲル濾過クロマトグラフィ(SEC)装置を多角度散乱解析(MALS)やSAXSに直接接続し,単分散で測定可能な条件を検討した結果,慣性半径は26オングストローム程度であることがわかり,分子量から見積もった球状蛋白質の大きさに対応した.すなわち,閉構造の単分散ピークの測定に成功した.さらなる精度を上げ,またSTAP-2との複合体測定条件パラメータを最適化している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
用量依存的にSTAP-2がBrkを活性化することが示せた.この活性化において,Brk自身のリン酸化は直接は関与していないことや,基質特異性にSTAP-2は関与しないことなどが新たに判明した.加えて,小角散乱解析の最適測定条件を決定することができたため,最終目的である,「複合体構造解析によりSTAT2とBrkが結合することがSTATリン酸化能の亢進に大きく関与することを説明する」に向けて着実に性状解析が進んだように思う.結晶の作製には至っていないが,複合体を安定化する変異体の作製などに向けて,目処がついてきたため概ね順調に進んできたと言って良い.
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今後の研究の推進方策 |
STAP-2によるBrk活性化の分子メカニズムの実体は,これまでのデータを検討すると何らかの方法でBrkオープンフォームが持続される.これまでの相互作用研究から,両者の結合は解離速度定数が大きな成分が見られる.STAP-2はBrkの基質になることにより,生成物リン酸化チロシンがBrkのSH2ドメインと結合することも寄与しているのかもしれない.STAP-2の中でリン酸化を受けるチロシンは,22, 250, 310, 322が発見されており,実際にどのリン酸化がBrkオープンフォームの維持に関わるか,変異実験により究明している段階である.また,STAP-2のSH2-lik3ドメイン後に存在するプロリンリッチ領域がBrkのSH3ドメインとの相互作用に関わる可能性も,ドメインだけを発現させたコンストラクトにより評価したい. Brkが主にがん細胞での高発現が見られるため,Brkを標的とした創薬研究は多くの製薬会社で長年行われてきたが,低分子化合物を用いて他のキナーゼとの特異性を出すことは容易でなく,また結晶構造が解析されていないために構造情報を元にしたリード化合物の最適化もできない状態が続き,現在,Brk標的薬の上市には至っていない. その他,STAP2のPHドメインに結合する脂質を同定することは細胞内局在を論じる上で不可欠のため,ドットブロット法を用いSTAP2の脂質指向性を解析する.X線結晶構造解析および相互作用解析から構築されたモデルについて,変異を導入したBrkおよびSTAP2を用いて培養細胞の系で検証する STAP2とSTAT3およびSTAT5との結合への影響・細胞内局在を免疫共沈降および免疫蛍光染色により解析, STAT3およびSTAT5転写活性への影響をルシフェラーゼによるレポーターアッセイにより解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品,試薬購入を実験に応じて購入しており,44,004円を来年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬等,有効期間のあるものは必要に応じて購入する必要があるため,44,004円は試薬購入に充当する。
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