研究課題/領域番号 |
26440019
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金子 美華 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00323163)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖鎖 / CasMab / 腫瘍型糖鎖構造 / 糖転移酵素遺伝子 / 抗体医薬開発 |
研究実績の概要 |
ポドプラニン(PDPN)は、種々の腫瘍に高発現しているムチン型糖タンパク質で、リンパ管マーカーやがん幹細胞群マーカーとして使用されている。申請者らは腫瘍組織由来PDPN上に腫瘍特異的な糖鎖修飾の存在を示すデータを得、腫瘍型PDPNを認識する複数の新規抗体を取得した。本研究では、これらの抗体を利用してPDPN上の腫瘍型糖鎖構造とその生合成機序を徹底的に解明し、さらに、PDPN上の腫瘍特異的糖鎖構造のがん幹細胞形質への関与を調べること、また、得られた腫瘍型糖鎖構造認識抗体の抗体医薬開発の可能性を検証することを目的とした。 本年度は、腫瘍特異的糖鎖構造の付加部位の絞り込みとして、まず、欠損型PDPN-Fcキメラタンパク質をほ乳類細胞に強制発現、精製し、種々の腫瘍型糖鎖構造認識抗体の反応性についてELISA法を用いて解析を行い、糖鎖付加部位候補領域を特定した。糖鎖付加部位候補領域に存在するセリンとスレオニンをアラニンに置換し、抗体の反応性をフローサイトメトリー解析、ウェスタンブロット法にて解析した。さらに、特定された糖鎖付加部位周辺のアミノ酸配列もアラニン置換を行い、詳細な解析を行った。その結果、腫瘍型糖鎖構造認識抗体は、これまでの解析法では糖鎖付加の検出されなかった部位に付加された糖鎖構造と、かつ、糖鎖付加部位周辺のPDPN本体のアミノ酸配列の両方を認識することで、腫瘍に特異的な反応性を示す事が可能になったと推測された。また、腫瘍型糖鎖構造の生合成に関与する糖転移酵素関連遺伝子群の特定のため、独自に開発した185種類の糖鎖関連遺伝子に対する定量的real-time PCRの系を用い、各種がん細胞株や正常細胞株の糖鎖遺伝子の網羅的解析を行い、神経膠腫の中で最悪性の神経膠芽腫と低悪性の神経膠腫を区別する糖転移酵素のプロファイリングを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、がん細胞表面抗原ポドプラニン(PDPN)上の腫瘍型糖鎖構造を決定するため、糖鎖付加部位の同定と糖付加最小単位PDPNタンパクの大量精製を行うこと、また、種々の腫瘍細胞における腫瘍型糖鎖構造プロファイルと糖転移酵素関連遺伝子プロファイルの比較検討によりその生合成機序を解明し、糖鎖構造の特定を行うこと、を計画しており、順調に達成している。また、腫瘍特異的糖鎖構造の付加部位の絞り込み研究材料として、種々のPDPN-FcキメラやAla置換型PDPNなどを安定的にタンパクを取得できる系を確立したことは大きな成果である。さらに、腫瘍細胞株だけでなく、比較的正常に近いと考えられる細胞株についても糖転移酵素関連遺伝子プロファイルのデータを蓄積したことも、プロファイルの比較検討に役立った。また、本研究については、学会発表および論文発表を行っており、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、本研究に使用している腫瘍型糖鎖構造認識抗体の抗体遺伝子を取得し、遺伝子組換えによりヒト定常領域とのキメラ型抗体を作製する。作成したキメラ型抗体の活性を検定する。また、腫瘍型糖鎖構造生合成に関与する糖転移酵素関連遺伝子のノックアウト細胞株の樹立を行い、糖鎖構造の表現型(浸潤能や運動能など)への機能的関与を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は概ね計画通りに研究を遂行でき、予定していた予算は順調に使用した。残額が少なく、有効に必要試薬を購入出来ないため、来年度に持ち越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度予算と今年度予算残額を合算し、種々のPDPN抗体の遺伝子改変実験等を遂行する予定である。
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