研究課題
(A)脳における水チャネルaquaprin-4(AQP4)特有な水透過機構の解明:脱炭酸酵素の阻害剤であるアセタゾラミド(AZA)はAQP4の水透過活性を下げることでも知られており、極低温電子顕微鏡像を用いてAZAが結合したAQP4二次元結晶の実像データで5Å分解能の立体構造解析を明らかにした。原子分解能でAZAの結合位置を特定するするため、二次元結晶由来のデータの分解能向上をめざした。同一結晶条件内に含まれる複数の対称性をもつ二次元結晶が生成されるため、原子分解能レベルのデータ収集には、試料作製および電子回折データの収集にかなりの時間を要したが、3.2Å分解能での立体構造解析が可能になった。最終的なデータ数を増やすことで分解能の向上が期待できるが、現時点でもリガンドに相当するデンシティは、直接ポアを塞ぐ位置で結合し、AQP4の水透過を抑制していることがはっきりし、5Å分解能の三次元再構成像で推定された結合位置とも一致した。(B)AQP4のアレイ形成に重要なN末端構造の解明:AZAが結合したAQP4の二次元結晶でも、同様なアレイ形成に重要なN末端側のデンシティが確認されていることから、3.2Å分解能の電子回折データと5Å分解能の実像データ(フィルムに記録)を組み合わせたハイブリッドのデータ生成し構造解析を進めることで、通常の解析では確認できなかったN末端側の主鎖構造をある程度特定でき、アレイ形成の足場を提供する部分がわかってきた、しかし、記録媒体であるフィルムの性質に依存して詳細な部分が可視化できないことが判明したため、更なる分解能向上を目指して、昨年度より導入した直接電子をカウントできるK2 Summitによる高分解能の画像の記録システムをようやく完成させることができた。将来的には、実像データのみの二次元結晶高分解能三次元再構成が有望であることもわかってきた。
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