研究課題
転写因子 Sp1 による遺伝子の転写活性化には、同蛋白質のホモオリゴマー形成と、基本転写因子群 TAF4 とのヘテロな相互作用の両方が重要である。これまでに、高分解能溶液NMRにより Sp1 のホモオリゴマー形成に関与する領域を同定してきた。本研究はこれを発展させ、Sp1 と TAF4の相互作用を解析し、ホモならびにヘテロな相互作用がどのように転写活性化に寄与しているのかを明らかにする。また、Sp1 は、生理的条件下において特定の立体構造を形成することなく相互作用することが申請者により見いだされている。立体構造の形成を伴わずに、どのようにして相互作用の相手分子 (Sp1 自身、および TAF4) を認識するのかを明らかにする事により、これまでに知られているものとは異なる新規な相互作用機構が明らかになると期待される。その目的のため、平成26年度は以下の研究を実施する予定であった。1.NMRピークの帰属 蛋白質-蛋白質間相互作用を残基レベルの分解能で解析するためには、個々のNMR共鳴ピークがどのアミノ酸残基に由来するのかを同定しなくてはならない。これは「NMRピークの帰属」と呼ばれ、NMRを用いた蛋白質の構造解析の第一歩であり最も重要な作業のうちのひとつである。本研究ではTAF4に属する4つのグルタミンリッチドメイン(Qドメイン)のうち、2つについて帰属を完了した。また、残る2つについても帰属に必要な各種三次元スペクトルの測定は完了している。新年度にまたがってしまったが、1~2ヶ月以内に全てのQドメインの帰属作業を完了できる見込みである。2.等温滴定型熱量計による相互作用解析 NMRによる相互作用解析と平行して、等温滴定型熱量計 (ITC) による分子間相互作用の解析を行う計画であった。サンプル調製の困難さにより計画どおり進んでいないが、出来るだけ早急に測定・解析を行う。
3: やや遅れている
当初の目的としている「NMRのピークの帰属」に関しては、大体予定通り進行している。その一方で、同時に並行して行う予定であった「等温滴定型熱量計 (ITC) による相互作用解析」に関しては、サンプル調製の困難さにより測定を思うように進める事が出来なかった。
本研究で取り扱う Sp1、TAF4 ともに天然変性蛋白質であり、プロテアーゼなどによる分解を受けやすく、また水溶液中で非特異的な会合体を形成しやすいという性質をもつ。そのためサンプル調製に困難さが常につきまとう。今年度は、蛋白質を安定に保ち、溶解度を上げると考えられているグリセリンやアルギニンなどの低分子化合物を測定サンプルに添加しておく事により、プロテアーゼによる部分分解や、非特異的な自己会合などの問題の回避を試みる。
物品費などの購入が予定していたよりも少なかったため。
平成27年度も引き続き、安定同位体標識した蛋白質を用いて相互作用解析を行う予定である。高価な試薬である安定同位体試薬の購入等に充てる。
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http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/yakkai/