研究課題/領域番号 |
26440025
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
星野 大 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (70304053)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 転写因子 / NMR / 分子間相互作用 / 天然変性蛋白質 |
研究実績の概要 |
転写因子 Sp1 による遺伝子の転写活性化には、同蛋白質のホモオリゴマー形成ならびに基本転写因子群 TAF4 殿へテロな相互作用の両方が重要である。これまでに、高分解能溶液NMRにより Sp1 のホモオリゴマー形成に関与する領域を同定してきた。本研究はこれを発展させ、Sp1 と TAF4 の相互作用を解析し、ホモならびにヘテロな相互作用がどのように転写活性化に関与しているのかを明らかにする。また、Sp1 は、生理的条件下において特定の立体構造を形成する事無く相互作用する事が申請者により見いだされている。立体構造の形成を伴わずに、どのようにして相互作用の相手分子 (Sp1 自身、および TAF4) を認識するのかを明らかにする事により、これまでに知られているものとは異なる新規な相互作用機構が明らかになると期待される。その目的のため、平成27年度は以下の研究を実施する予定であった。 1.15N-QA, 15N-QB と TAF4(270-700) の相互作用解析 計画は順調に進行し、15N-QB の分子中央からC末端におよぶ領域が TAF4 との相互作用部位である事が明らかとなった。一方、15N-QA と TAF4 との相互作用は検出されなかった。 2.区分標識された 15N-TAF4(270-700) と QA, QB の相互作用解析。 区分標識法で得られる蛋白質の収量がきわめて微量であったため、Q1,Q2,Q3,Q4 の TAF4 フラグメント蛋白質を用いて QB との相互作用解析を行った。計画は順調に進行し、TAF4 の中の Q1 ドメインが相互作用部位である事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.15N-QA, 15N-QB と TAF4(270-700) の相互作用解析 15N-標識された S1 の QA, QB 両ドメインに対して、TAF4(270-700) 存在下・非存在下における異種核多次元NMRを測定する。前年度までに得られているスペクトルの帰属情報をもとに、相互作用部位を残基レベルの分解能で明らかにする。計画は順調に進行し、15N-QB の分子中央からC末端にかけての領域が TAF4(270-700) との相互作用部位である事が明らかにされた。一方、15N-QA と TAF4(270-700) との相互作用は検出されなかった。 2.区分標識された 15N-TAF4(270-700) と QA, QB の相互作用解析 上記1の相互作用解析を補完するものとして、15N-TAF4(270-700) に対して QA, QB 存在下・非存在下における異種核多次元NMR測定を行い、TAF4(270-700) における相互作用部位を明らかにする。区分標識 TAF4 の作製を試みたが、得られる蛋白質の収量が極めて微量であったため、計画を修正し、フラグメント蛋白質を用いた解析を行う事とした。その結果、TA4 に4つある Q1,Q2,Q3,Q4 ドメインのうち、最もN末端に位置する Q1 ドメインにおいて QB との特異的な相互作用が見られる事を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
現在までのところ、計画は概ね順調に進行している。今後も引き続き測定・解析を行い、転写因子間の相互作用を残基レベルの分解能で、かつ定量的に解析する事を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費などの購入が予想していたよりも少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度も引き続き安定同位体標識したタンパク質を用いて相互作用解析を行う予定である。安定同位体試薬などの物品購入比に充てる。
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