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2014 年度 実施状況報告書

エネルギー代謝経路をターゲットとしたアフリカ睡眠病の薬剤開発

研究課題

研究課題/領域番号 26440027
研究機関京都工芸繊維大学

研究代表者

志波 智生  京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (80401206)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードトリパノソーマ / diironタンパク質 / 膜表在型タンパク質 / アスコフラノン / X線結晶構造解析
研究実績の概要

本研究はエネルギー代謝経路をターゲットとしたアフリカ睡眠病の薬剤開発を目的としており、その標的タンパク質であるシアン耐性酸化酵素(TAO)及びグリセロールリン酸化酵素(GK)の構造を阻害剤との複合体構造を含む様々な状態で明らかにすることによって、実用的な薬剤候補となる強力な阻害剤の開発を目指している。以下に本年度の成果を示す。
・TAOの新規阻害剤であるフェルレノールとの複合体構造を2.7Å分解能で明らかにすることができた。フェルレノールは、アスコフラノンと比較して化学合成が容易ということで、実用的な薬剤開発が期待できる。また、フェルレノールは、TAOの膜結合領域にある疎水的なポケットに結合していることが明らかになった。さらに、二核鉄近傍に酸素分子と思われる電子密度を確認することができた。
・GKとinh-7(TAOとGKの両方の酵素反応を阻害する)との複合体構造を2.9Å分解能で明らかにすることができた。inh-7は、GKのATP結合部位の近傍に結合していることがわかった。
・inh-7の誘導体でTAOとGKの両方をさらに強くに阻害する化合物を見つけることができた(IC50=115 nM for TAO, IC50=87 nM for GK)。新たに見つけた化合物は、inh-7より単純な構造をしており、アスコフラノンと比較してより全合成が簡単で安価に合成できる化合物である。得られた情報を手掛かりとして、より安価な薬剤の開発を推進することができると考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

計画としては、TAOと新規阻害剤のフェルレノールとの複合体の構造を明らかにすることを目的としていたが、2.7Å分解能で明らかにすることができた。その結果、TAOの二核鉄近傍の疎水的なポケットに結合していることがわかった。アスコフラノン誘導体との構造を比較することで、安価でさらにTAOを強力に阻害する化合物を見出すことが可能になった。
GKについても計画していた阻害剤(inh-7)との複合体の構造を2.9Å分解能で明らかにすることができた。阻害剤は、ATP結合部位とは重ならない部位に結合していることがわかった。
さらに、inh-7以外にもさらに強力にTAOとGKを阻害する化合物を明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

①今回得られた化合物やinh-7は、立体構造や触媒する反応が全く異なる2つの酵素(TAO, GK)を阻害するので、両酵素との複合体の構造を高分解能で明らかにして、なぜこれらの化合物がTAOとGKの”bifunctional inhibitor”として働くのかを明らかにしたい。
②その化合物が実際にトリパノソーマに対して効果があるのかを調べるために、共同研究を行っている東京大学・大学院医学系研究科の北潔研究室でin vivoの実験を行う。
③TAOの還元型の結晶構造を明らかにすることで、TAOの反応機構を明らかにする。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Probing the ubiquinol-binding site of recombinant Sauromatum guttatum alternative oxidase expressed in E. coli membranes through site-directed mutagenesis.2014

    • 著者名/発表者名
      Young L, May B, Pendlebury-Watt A, Shearman J, Elliott C, Albury MS, Shiba T, Inaoka DK, Harada S, Kita K, Moore AL
    • 雑誌名

      Biochimica et Biophysica Acta

      巻: 1837 ページ: 1219-1225

    • DOI

      10.1016/j.bbabio.2014.01.027

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Molecular basis for the reverse reaction of African human trypanosomes glycerol kinase.2014

    • 著者名/発表者名
      Balogun EO, Inaoka DK, Shiba T, Kido Y, Tsuge C, Nara T, Aoki T, Honma T, Tanaka A, Inoue M, Matsuoka S, Michels PA, Kita K, Harada S.
    • 雑誌名

      Mol Microbiol.

      巻: 94 ページ: 1315-1329

    • DOI

      10.1111/mmi.12831

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 微生物からの贈り物アスコフラノン - アフリカ睡眠病からがん細胞まで -2014

    • 著者名/発表者名
      北潔, 志波智生, 斎本博之, 稲岡ダニエル健, 原田繁春
    • 雑誌名

      MEDCHEM NEWS

      巻: 24-4 ページ: 44-50

    • 査読あり
  • [学会発表] Glycerol kinase from human African trypanosomes possess an intrinsic acid phosphatase activity2014

    • 著者名/発表者名
      Balogun Emmanuel O., Inaoka Daniel K., Shiba Tomoo, Sakamoto Kimitoshi, Kido Yasutoshi, Nara Takeshi, Aoki Takashi, Honma Teruki, Tanaka Akiko, Inoue Masayuki, Matsuoka Shigeru, Michels Paul AM., Harada Shigeharu, Kita Kiyoshi
    • 学会等名
      第87回日本生化学会大会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
  • [学会発表] アフリカトリパノソーマのシアン耐性酸化酵素 (TAO)と新規阻害剤: フェルレノールとの複合体の結晶構造2014

    • 著者名/発表者名
      上田慧、志波智生、高橋元、稲岡ダニエル健、城戸康年、坂元君年、柘植千明、Emmanuel Oluwadare Balogun、奈良武司、青木孝、本間光貴、田仲昭子、井上将行、松岡茂、Anthony L. Moore、斎本博之、原田繁春、北潔
    • 学会等名
      第87回日本生化学会大会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
  • [学会発表] アフリカトリパノソーマのシアン耐性酸化酵素(TAO)と新規阻害剤:フェルレノールとの複合体晶構造2014

    • 著者名/発表者名
      上田 慧、志波 智生、高橋 元、稲岡 ダニエル健、城戸 康年、坂元 君年、柘植 千明、本間 光貴、田仲 昭子、斎本 博之、北 潔、原田 繁春
    • 学会等名
      第14回日本蛋白質科学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-06-25 – 2014-06-27

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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