研究課題
本研究はトリパノソーマのエネルギー代謝経路をターゲットとしたアフリカ睡眠病の薬剤開発を目的としており、その標的タンパク質であるシアン耐性酸化酵素(TAO)及びグリセロールキナーゼ(GK)の薬剤候補となる阻害剤との複合体の構造を明らかにすることで、薬剤開発のための知見を得ることを目的としている。以下に本年度の成果を示す。・TAOとGKの両酵素を阻害するinh-7とTAOとの複合体の結晶構造を3.5Å分解能で明らかにすることができた。・inh-7より強力に両酵素を阻害するGK-butylを見出し、その化合物とGK及びTAOとの複合体の結晶構造をそれぞれ2.5, 3.2Å分解能で明らかにすることができた。・このGK-butylはinh-7やすでにTAOの阻害剤として知られているアスコフラノンよりも合成が容易であるので、抗トリパノソーマ薬として有望である。
1: 当初の計画以上に進展している
計画としては、inh-7とTAO及びGKとの複合体構造を明らかにしようと計画していたが、GKとの複合体を2.9、TAOとの複合体を3.5Å分解能で明らかにすることに成功した。さらに、inh-7よりも両酵素を強く阻害する化合物(GK-butyl)を見出すことができた。この化合物は、inh-7やTAOの阻害剤であるアスコフラノンより単純な構造をしており、安価に合成できると考えられる。さらに、このGK-butylとTAO及びGKとの複合体の結晶構造をそれぞれ3.2, 2.5Å分解能で明らかにすることができた。
inh-7やGK-butylは立体構造や触媒する反応が異なる2つの酵素(TAOとGK)を阻害するため、両方の構造をより高分解能で明らかにして、なぜこれらの化合物がTAOとGKの”bi-functional inhibitor”として機能しているのかを明らかにしたい。原虫に対する効果や毒性のcheckなどを行い、薬剤開発に必要なデータを収集する。より効果的に両酵素を阻害するような化合物を見出す。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Int. J. Mol. Sci.
巻: 16 ページ: 15287-15308
10.3390/ijms160715287
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巻: 10 ページ: e0125829
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