組織の構造パターンを決定する細胞接着分子の構造生物学的研究

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26440028
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 鈴木 守 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (40280507)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: 細胞接着分子 / 構造生物学

研究実績の概要

平成２８年度は、前年度に得られたネクチン１－ネクチン３複合体結晶（結晶化条件：PEG-10,000、Bis-Tris pH 6.5、Potassium Sodium Tartrate）の結晶性の改善を行った。まず結晶化条件の各コンポーネント及びタンパク質溶液の濃度検討を行ったが、性状の良い結晶が得られなかったため、Additive Screenによる添加剤スクリーニングを行い、プラセオジム(Ⅲ)酢酸を見出した。プラセオジム(Ⅲ)酢酸の添加により、目視での結晶性は改善したため、これを加えた条件検討を行ったが、構造解析に至る結晶を得ることは出来なかった。同時並行で行っていた結晶化スクリーニングから、新たな条件を２つ見出したが、いずれも構造解析の結果、ネクチン３のみを含むホモダイマーであり、前年度にPDBへの登録を行ったネクチン３ホモダイマーの構造（PDB ID: 5B22）と同じ空間群・格子定数を持つことが判った。
本研究を通じて、ネクチン１－ネクチン３ヘテロ複合体の構造解析には至らなかったものの、新規構造としてマウスネクチン１、マウスネクチン３それぞれのホモダイマー構造を解明した。また、相互作用解析実験の結果、ネクチンのヘテロ相互作用とホモ相互作用は、種々の塩に対して非常に似通った解離傾向を示すことから、同様の結合モードを有することが示唆された。加えて、ケミカルクロスリンクを用いた実験により、ネクチン１－ネクチン３ヘテロ複合体の最小単位はヘテロ２量体であることが示された。これらの結果は、ネクチンが細胞間でヘテロフィリックに結合する際、各細胞上でシス・ホモダイマーを形成した後にトランス相互作用を起こすという通説では説明が難しく、ネクチンによる細胞接着機構を再考する第一歩となるものである。

研究成果

• [雑誌論文] Hydroxyethyl cellulose matrix applied to serial crystallography. (2017)
  • 著者名/発表者名: Michihiro Sugahara, Takanori Nakane, Tetsuya Masuda, Mamoru Suzuki, Shigeyuki Inoue, Changyong Song, Rie Tanaka, Toru Nakatsu, Eiichi Mizohata, Fumiaki Yumoto, Kensuke Tono, Yasumasa Joti, Takashi Kameshima, Takaki Hatsui, Makina Yabashi, Osamu Nureki, Keiji Numata, Eriko Nango, So Iwata
  • 雑誌名: Scientific reports 巻: 7 ページ: 703
  • DOI: 10.1038/s41598-017-00761-0.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Light-induced structural changes and the site of O= O bond formation in PSII caught by XFEL (2017)
  • 著者名/発表者名: Michihiro Suga, Fusamichi Akita, Michihiro Sugahara, Minoru Kubo, Yoshiki Nakajima, Takanori Nakane, Keitaro Yamashita, Yasufumi Umena, Makoto Nakabayashi, Takahiro Yamane, Takamitsu Nakano, Mamoru Suzuki et.al
  • 雑誌名: Nature 巻: 534 ページ: 131-135
  • DOI: 10.1038/nature21400
  • 査読あり
• [雑誌論文] Atomic resolution structure of serine protease proteinase K at ambient temperature (2017)
  • 著者名/発表者名: Tetsuya Masuda, Mamoru Suzuki, Shigeyuki Inoue, Changyong Song, Takanori Nakane, Eriko Nango, Rie Tanaka, Kensuke Tono, Yasumasa Joti, Takashi Kameshima, Takaki Hatsui, Makina Yabashi, Bunzo Mikami, Osamu Nureki, Keiji Numata, So Iwata, Michihiro Sugahara
  • 雑誌名: Scientific Reports 巻: 7 ページ: 45604
  • DOI: 10.1038/srep45604
  • 査読あり
• [雑誌論文] Membrane protein structure determination by SAD, SIR, or SIRAS phasing in serial femtosecond crystallography using an iododetergent (2016)
  • 著者名/発表者名: Takanori Nakane, Shinya Hanashima, Mamoru Suzuki et.al
  • 雑誌名: Proceedings of the National Academy of Sciences 巻: 113 ページ: 13039-13044
  • DOI: 10.1073/pnas.1602531113
  • 査読あり
• [雑誌論文] Structural characterization of an aldo-keto reductase (AKR2E5) from the silkworm Bombyx mori (2016)
  • 著者名/発表者名: Kohji Yamamoto, Akifumi Higashiura, Mamoru Suzuki, Takahiro Shiotsuki, Ryohei Sugahara, Takeshi Fujii, Atsushi Nakagawa
  • 雑誌名: Biochemical and biophysical research communications 巻: 474 ページ: 104-110
  • DOI: 10.1016/j.bbrc.2016.04.079
  • 査読あり
• [雑誌論文] Redox-coupled structural changes in nitrite reductase revealed by serial femtosecond and microfocus crystallography (2016)
  • 著者名/発表者名: Yohta Fukuda, Ka Man Tse, Mamoru Suzuki, Kay Diederichs, Kunio Hirata, Takanori Nakane, Michihiro Sugahara, Eriko Nango, Kensuke Tono, Yasumasa Joti, Takashi Kameshima, Changyong Song, Takaki Hatsui, Makina Yabashi, Osamu Nureki, Hiroyoshi Matsumura, Tsuyoshi Inoue, So Iwata, Eiichi Mizohata
  • 雑誌名: Journal of biochemistry 巻: 159 ページ: 527-538
  • DOI: 10.1073/pnas.1517770113
  • 査読あり
• [雑誌論文] Oil-free hyaluronic acid matrix for serial femtosecond crystallography (2016)
  • 著者名/発表者名: Sugahara, M. Song, C. Suzuki, M. Masuda, T. Inoue, S. Nakane, T. Yumoto, F. Nango, E. Tanaka, R. Tono, K. Joti, Y. Kameshima, T. Hatsui, T. Yabashi, M. Nureki, O. Numata, K. Iwata, S.
  • 雑誌名: Scientific Reports 巻: 6 ページ: 24484
  • DOI: 10.1038/srep24484.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] ヤマブシタケ由来RNaseHe1のZn複合体のX線構造解析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 小林弘子, 元吉尚美, 板垣正, 武部克希, 寒川剛, 鈴木守
  • 学会等名: 日本薬学会第137年会
  • 発表場所: 宮城県仙台市仙台国際センター
  • 年月日: 2017-03-24 – 2017-03-27
• [学会発表] M3型化膿レンサ球菌が産生する線毛タンパク質 FctA3 の結晶構造解析 (2016)
  • 著者名/発表者名: 川剛、武部克希、中田匡宣、川端重忠、鈴木守
  • 学会等名: 日本結晶学会平成28年度年会
  • 発表場所: 茨城県水戸市茨城県民文化センター
  • 年月日: 2016-11-17 – 2016-11-18
• [学会発表] 高粘度結晶輸送媒体を利用したXFEL施設SACLAでの連続フェムト秒結晶構造解析 (2016)
  • 著者名/発表者名: 菅原道泰，鈴木 守，桝田 哲哉，井上茂之，Changyong Song,中根崇智，溝端栄一,中津亨, 湯本史明, 南後恵理子, 登野健介, 沼田 圭司，岩田想
  • 学会等名: 日本結晶学会平成28年度年会
  • 発表場所: 茨城県水戸市茨城県民文化センター
  • 年月日: 2016-11-17 – 2016-11-18
• [学会発表] 膜蛋白質のSFXによる迅速位相決定を志向したヨウ素含有界面活性剤の開発 (2016)
  • 著者名/発表者名: 中根崇智、花島慎弥、鈴木守、斎木悠、林太一、垣之内啓介、杉山成、川竹悟史、松岡茂、松森信明、南後恵理子、小林淳、島村達郎、木村香菜子、森千寿、国島直樹、菅原道泰、高久陽子、井上茂之、桝田哲哉、保坂俊彰、 登野健介、城地保昌、亀島敬、初井宇記、矢橋牧名、井上豪、濡木理、岩田想、村田道雄、溝端栄一
  • 学会等名: 日本結晶学会平成28年度年会
  • 発表場所: 茨城県水戸市茨城県民文化センター
  • 年月日: 2016-11-17 – 2016-11-18
• [学会発表] 細胞接着因子 Nectin-1/3 ヘテロ複合体の立体構造解析 (2016)
  • 著者名/発表者名: 寒川剛、武部克希、勝谷拓也、鈴木守
  • 学会等名: 第16回日本蛋白質科学会年会
  • 発表場所: 福岡県福岡市福岡国際会議場
  • 年月日: 2016-06-07 – 2016-06-09