研究実績の概要 |
細胞間で物質の透過とバリア機能を担う4回膜貫通タンパク質claudinは27種類の分子が複雑に共重合することで、各組織固有の細胞間物質透過機構を制御している。ウエルシュ菌エンテロトキシン(Clostridium perfringens enterotoxin, CPE)のC末端領域(C-CPE)が毒性を伴うことなくclaudin-3とclaudin-4に結合することから、C-CPEをprototypeとしたclaudin binder創製系を確立し、2つの高親和性claudin-4 binder(C-CPE194N309A/S313A、C-CPE205N309A/S313A)の創製とそのX線結晶構造解析を行った。 2つの高親和性claudin-4 binderを大腸菌で大量発現させた後、ニッケルカラムとサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。市販のスクリーニングキットで沈殿剤の絞り込みを行い、その結果、沈殿剤にマロン酸ナトリウムを用いることがC-CPEの結晶化に有効であることがわかった。種々のマロン酸ナトリウム濃度やpHの最適化を行うことで構造解析に資する結晶の作製に成功した。得られた結晶のX 線回折データを大型放射光施設SPring-8のビームラインBL44XUにて収集した。既に報告されている野生型C-CPEの結晶構造をモデルとした分子置換法により2つの高親和性claudin-4 binder の立体構造を決定した。さらに、既報のヒトclaudin-4とC-CPEの複合体X線構造(PDB ID : 5B2G)をモデルとしてclaudin-4と2つの高親和性claudin-4 binderの複合体モデル構造を作製し、claudin-4 binderのSer313 残基が形成するくぼみやN末端領域の構造変化がclaudinとの結合安定性に寄与していることを明らかにした。
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