研究課題
DNA 修復において最も重要な過程の一つが膨大な DNA 配列の中から傷害部位を見つけることである。塩基除去修復系では、DNA グリコシラーゼが傷害の認識を行うが、その過程でDNA 鎖を曲げ、傷害塩基を DNA 鎖からフリップアウトさせて傷害を認識していることが知られている。しかし、これは傷害認識の最終段階であり、傷害認識の初期段階で DNA 鎖とどのような相互作用をしているかは未解明である。本研究では、高度好熱菌由来の DNA グリコシラーゼを用いて構造解析を行うことにより、傷害認識の初期過程を解明することを目的としている。高度好熱菌由来の MutM と 8-オキソグアニンを含む DNA との複合体を結晶構造解析した結果、他の DNA グリコシラーゼと同様に 8-オキソグアニンをフリップアウトさせて、DNA 鎖を曲げていることがわかった。その際、8-オキソグアニンは Asp211 の側鎖と Leu209, Ser207 の主鎖と水素結合することにより認識されているおり、反対側のシトシンは Arg99 の側鎖によって認識されていることがわかった。一方、傷害を含まない DNA との複合体構造では、DNA 鎖は曲がっておらず、塩基のフリップアウトも起こっていないことがわかった。また、MutM の構造を DNA と結合している場合と DNA と結合していない場合で比較すると、傷害を含む DNA との複合体では2つのドメンンが DNA を挟む方向に動いているのに対し、傷害を含まない DNA では2つのドメインはより open な構造になっていることがわかった。これらの複合体の立体構造解析から、MutM は傷害認識の初期段階では塩基を一つ一つフリップアウトさせるのではなく、DNA 鎖をスライドしながら不安定な塩基対を探している可能性が示唆される。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件)
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