紫外線や化学物質によって生じるDNA損傷によって、一時的にDNA複製は停止し、DNA修復が起こった後、複製フォーク構造が再形成されると考えられている。この複製フォーク構造の形成後にDnaBヘリカーゼが再導入され、複製は再開始される。この大腸菌複製再開始のメカニズム研究を構造生物学的観点から行い、1)いまだ解かれていない複製再開始因子の立体構造を決定し、各因子同士の相互作用解析を行い、2)複製再開始複合体の分子集合・解離の過程を検出し、明らかにすることを本申請の目的とした。最終年度である本年度は、DnaT-PriBの相互作用解析を行い、PriBにおいてDnaT結合部位に存在する幾つかのアミノ酸の重要性を調べ、複製再開始における一本鎖DNAがPriBに結合し、DnaTによって解離するモデルの構築を行った。その結果に関しては、現在投稿中であり、この結果を元に、シンガポール国際大学との共同研究も始まっている。また、DnaTのN末ドメインの機能であるオリゴマー形成を調べる為、幾つかの変異体を作成し、オリゴマー形成に重要な部位を同定した。この情報を利用し、未だ判明していないDnaTN末の立体構造決定に向けて、現在検討を行っている。これらの結果は2件の国際学会を含め、本年度は6件の学会発表を行った。本申請では、複製再開始因子PriB、PriC、DnaTの構造およびそれらの間の相互作用情報、それぞれの因子とDNAとの相互作用情報を集めた。その結果は複製再開始のメカニズム解明に寄与したと自負している。期間全体として、16件の学会発表、4件の論文発表を行い、今後も本申請の結果を元に、論文を作成する予定である。
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