研究課題
ペルオキシソーム膜タンパク質であるPex14pは、ペルオキシソームマトリクスへ運ばれるタンパク質の輸送において中心的分子として機能する。私達は、Pex14pが動物培養細胞においてある種のストレス刺激によりリン酸化修飾され、ペルオキシソームマトリクスタンパク質輸送を制御することを示唆する結果を得ていた。本研究は細胞外刺激に応答したリン酸化修飾による、ペルオキシソームタンパク質輸送およびペルオキシソーム機能の制御機構の解明を目的とし、A)Pex14pリン酸化修飾によるペルオキシソームタンパク質輸送、およびペルオキシソーム機能の制御機構、B)Pex14pリン酸化修飾の上流シグナル伝達経路の解明を目指す。H26年度はPex14pのリン酸化修飾部位の同定を行った。質量分析解析およびリン酸化候補残基に対するアミノ酸置換導入変異体の作製による検討により、ストレス刺激に応答したPex14pの主要なリン酸化残基を同定することができた。この知見を活用して非リン酸化型および恒常的リン酸化型Pex14p変異体を作製し、これらをPEX14欠損性CHO変異細胞に発現させた安定発現株を分離した。野生型Pex14pを入れ戻した安定発現株との比較により、このPex14pのリン酸化修飾がどのような分子機構でマトリクスタンパク質輸送を制御するのかを現在解析している。また、上記Pex14pリン酸化部位を特異的に認識するウサギポリクローナル抗体を作製し、これがストレス刺激に応答した内在性Pex14pを高感度かつ簡便に検出できることを見出し、不可欠な解析ツールとして確立することができた。
2: おおむね順調に進展している
主要な課題の一つであった、ストレス刺激に応答したPex14pの主要なリン酸化残基を同定することができたため。また、この研究成果を元にして非リン酸化型および恒常的リン酸化型Pex14p変異体を作製し、これらをPEX14欠損性CHO変異細胞に発現させた安定発現株も樹立できた。内在性リン酸化Pex14pを検出できる特異的抗体も作製できたことから、研究材料の調製と整備も進んでいるといえる。
A)Pex14pリン酸化によるペルオキシソームタンパク質の輸送制御非リン酸化型および恒常的リン酸化型Pex14p変異体の安定発現株を用いて、既に確立しているin vitroタンパク質輸送解析系や、免疫抗体染色・免疫沈降法などのin vivoの解析系を駆使して、Pex14pのリン酸化がマトリクスタンパク質輸送をどのように制御するのかを解析する。また、同定済みのPex14p結合性キナーゼを酵素として使用したin vitroキナーゼアッセイを行い、Pex14p結合性キナーゼが直接Pex14pリン酸化する酵素として機能するのか、また同定したリン酸化部位を特異的に修飾するのかどうか等を明らかにする。B)Pex14pリン酸化修飾の上流シグナル伝達経路の解明H26年度に引き続き、各種キナーゼ変異体や特異的キナーゼ阻害剤、RNA干渉法等の手法によりPex14pリン酸化に関与する細胞内シグナル伝達経路を明らかにする。解析には作製した抗リン酸化Pex14p抗体を活用する。関与の可能性が認められたキナーゼおよびそのシグナル伝達経路については、ペルオキシソームの生理代謝機能の調節およびリン酸化不全による応答の変化を解析する。
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