研究課題/領域番号 |
26440032
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
奥本 寛治 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20363319)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ペルオキシソーム / タンパク質 / リン酸化 / シグナル伝達経路 |
研究実績の概要 |
ペルオキシソーム膜タンパク質であるPex14pは、ペルオキシソームマトリクスタンパク質の輸送局在化において中心的分子として機能する。私達は、動物培養細胞に対するいくつかの酸化ストレス刺激によりPex14pがリン酸化修飾を受け、ペルオキシソームマトリクスタンパク質輸送を制御することを示唆する結果を得ていた。本研究は細胞外刺激に応答したリン酸化修飾による、ペルオキシソームタンパク質輸送およびペルオキシソーム機能の制御機構の解明を目的とし、さらにはPex14pリン酸化修飾の上流シグナル伝達経路の同定を含めたオルガネラ恒常性維持機構の全貌解明を目指すものである。 H26年度研究により同定したストレス刺激に応答したPex14pの主要なリン酸化残基情報に基づき、非リン酸化型および恒常的リン酸化型Pex14p変異体をPEX14欠損性CHO変異細胞に発現させた安定発現株を分離していた。H27年度は、これら安定発現株を用いた種々の解析を行い、恒常的リン酸化型Pex14pの発現によりマトリクスタンパク質輸送が中程度に阻害されることを明らかにした。従って、酸化ストレスによるPex14pのリン酸化修飾はペルオキシソームマトリクスタンパク質輸送を負に制御しており、酸化ストレスに対抗する応答機構の一つとして機能する可能性が示唆された。また、H26年度に作製した上記Pex14pリン酸化部位に対する特異的抗体と、キナーゼ阻害剤を併用してPex14pリン酸化修飾の上流シグナル伝達経路の検索、同定を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非リン酸化型および恒常的リン酸化型Pex14p変異体をPEX14欠損性CHO変異細胞に発現させた安定発現株を用いて、Pex14pのリン酸化修飾がペルオキシソームマトリクスタンパク質輸送を負に制御するというin vivoにおける明確な機能を見出した。これまで酵母から哺乳動物を含め細胞外刺激によるペルオキシソームタンパク質輸送制御の分子機構は全く未知であり、これまでに得た成果は新規かつ重要な知見といえる。また、リン酸化Pex14p特異的抗体を用いたPex14pリン酸化修飾の上流シグナル伝達経路解析も計画通りに進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
A)Pex14pリン酸化によるペルオキシソームタンパク質の輸送制御 Pex14pのリン酸化がどのような分子機構でマトリクスタンパク質輸送を抑制するのか、既に確立しているin vitroタンパク質輸送解析系や、免疫抗体染色・免疫沈降法などのin vivoの解析系を用いて解析する。特に、Pex14p を中心とした動的な複合体として存在するペルオキシソーム膜上タンパク質輸送装置の形成や機能制御におけるPex14pリン酸化の役割について詳細に検討する。 B)Pex14pリン酸化によるペルオキシソーム機能の制御 リン酸化Pex14p特異的抗体と各種キナーゼ変異体や特異的キナーゼ阻害剤を併用したPex14pリン酸化に関与する細胞内シグナル伝達経路の解析は継続して行う。また、Pex14p リン酸化依存的な酸化ストレス応答の生理的意義を解明するため、酸化ストレスに対する抵抗性(生存率)やペキソファジーを介したペルオキシソームの質的、量的制御にも関与するかも解析する。
|