研究実績の概要 |
微小管のアセチル化修飾は, 主要なアセチル化酵素であるα-チューブリンアセチル化酵素αTAT1により制御されている.アセチル化修飾は安定な微小管に広くみられ,微小管のアセチル化レベルとがんとの間には密接な関係があることが示されている.本課題では,αTAT1の基質認識機構と制御機構について検討してきた.これまでに,αTAT1によるα-tubulin認識の特異性を決定する残基について立体構造に基づいた変異体解析を行い,特異性の決定に関わるアミノ酸を明らかにした.また,αTAT1はコファクターであるAcCoAやCoAにより安定化され,その酵素の安定性はin vivoでも維持されていることを示した. 昨年度に引き続きαTAT1とα-tubulin由来ペプチドとの複合体の回折データの改善を試みたが,α-tubulin由来ペプチドの電子密度は改善しなかった.次にコファクターであるCoAが酸化され二量体化したCoA disulfideが結合していると想定されるαTAT1の構造解析を進めた.αTAT1-CoA disulfide複合体では,2つのCoAのうち一つはαTAT1-CoA複合体と同じ配置をもっていた.活性中心近傍には2つのCoAの間でS-S結合と考えられる電子密度がみられ,もうひとつのCoAは活性中心からリジン残基が認識されると想定される部位にメルカプトエチルアミン部分とパントテン酸部分が配置していた.一方,アデノシン2リン酸部分は,明確な電子密度が観察されなかった.ヒトではその生理学的意義は不明であるが,CoA disulfideが活性中心を占有していることから阻害剤としての機能することが想定される.そこで,αTAT1に対するCoA disulfideの阻害能,および酸化状態と還元状態が阻害能に与える影響の検討を進めている.
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