研究課題/領域番号 |
26440035
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
多田 俊治 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (70275288)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / MAPキナーゼ / MEK1 / 活性制御機構 / DFG motif |
研究実績の概要 |
本研究課題は、タンパク質リン酸化酵素であるMEK1の2箇所の構造不規則領域、D208~Y240(活性化セグメントと呼ばれ、活性ON-OFFといった分子スイッチ機能を担っている)およびG276~P307(直接的な分子スイッチではないが、活性化の抑制や自己リン酸化誘導による活性化といった機能の付与に関与している)の示す構造変化と酵素機能との相関を明らかにすることを目的としている。 今年度の主たる成果は、N末端から38残基を削除したヒト型MEK1の疑似活性抑制体(MEK1Δ38(S212D/S218D/S222D))の構造解明である。回折X線測定に適切な結晶調製に成功し、大型放射光施設SPring-8にて、結晶マウントをHAG法により行い、3.2 A 分解能のデータ収集を達成し、現在、R=28%の構造(P212121、a=100.7, b=125.5, c=214.3 A)を得ている。S212のリン酸化による活性の抑制機構についての知見は少なく、本構造から抑制機構の手掛かりが得られるものと考えている。一方、触媒機構の分子レベルでの解明を進めるため、昨年度に構造を決定した疑似活性体(MEK1Δ38(S218D/S222D))について、基質ペプチド(21残基)との複合体結晶の調製法につき検討を行った。現時点では条件を絞り込むに至っていない。さらに、フィードバック制御機構を示す疑似活性阻害体(MEK1Δ38(T286D/S218D/S222D))の大腸菌を用いた発現系の構築を行い、結晶化条件の探索を進め、微小な結晶を得るに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
それぞれの疑似リン酸化状態の構造解明は概ね研究計画通りに進展している。ただ、詳細な反応機構を含めて成果を出すことを目指して検討した活性体と基質ペプチド複合体の構造解明に成功していない点が不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、MEK1の活性化セグメントのコンフォメーション変化の構造要因およびフィードバック阻害に関わるコンフォメーション変化の構造要因を明らかにすることにある。そのうち。活性化セグメントについては概ね成果を得ている。本年度は最終年度であることから、フィードバック阻害機構の解明に主力を注ぐ。微結晶を得ることに成功しているMEK1Δ38(T286D/S218D/S222D)の構造解明を優先する。同時に、類似した機構によるフィードバック阻害を生じているものと推定されるT292D変異体についても大腸菌を用いた発現および結晶化を進める。また、適切な結晶化に成功していない活性体と基質類似化合物との相互作用様式については、類似した構造に基づく計算化学的手法を用いて明らかにする予定である(長浜バイオ大学、中江助手・白井教授との共同研究)。
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次年度使用額が生じた理由 |
活性体と基質ペプチドとの複合体の結晶調製を優先し、1種のフィードバック活性抑制体であるT292D体の発現、精製および結晶化を次年度に回すこととした。そこで、H27年度に購入予定であった精製用の滅菌器具の購入を控え、H28年度に滅菌器具購入の予算として使うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
大腸菌を用いた発現系により調製した標的タンパク質の高純度精製を目的とした種々滅菌器具の購入に充てたいと考えている。
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