本研究課題は、タンパク質リン酸化酵素であるMEK1の構造不規則領域、D208~Y240(活性化残基S218/S222を含むことから活性化セグメントと呼ばれ分子スイッチ機能を担っている)およびG276~P307(直接的な分子スイッチではないが、活性発現機能の抑制や自己リン酸化誘導による活性化といった機能の付与に関与している)の示す構造変化と酵素機能との相関を明らかにすることを目的としている。 今年度は、先の不活性体での経緯に基づき、疑似活性体(S218D/S222D)および疑似活性抑制体(S212D/S218D/S222D)の、より高い分解能でのデータ収集を大型放射光施設SPring-8において新規タンパク質結晶マウント法HAG法を適用して行い、質の向上した構造決定を進めた(それぞれ 2.5Aおよび3.2A分解能)。その結果、疑似活性体では、Mg2+イオンが結合してDFG-motif(D208/F209/G210) in構造になっているものとMg2+イオンが結合しておらずout構造となっている2種のコンフォメーションのものが得られ、先に我々が推定していたことであるが、MEK1におけるDFG-motifの構造にMg2+イオンが重要な役割を演じていることが指示された。また、疑似活性抑制体では、従来に見られなかった極めて興味深いコンフォメーションを活性化セグメントが取ることが明らかとなった。また、今期は、さまざまなATP類似化合物およびや新たに調製した19残基の基質ペプチドにつき疑似活性体および不活性体との親和性の評価を共鳴プラズモン法により試みるべく、適切な測定条件の検討を行った。
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