研究課題/領域番号 |
26440037
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
村川 武志 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90445990)
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研究分担者 |
林 秀行 大阪医科大学, 医学部, 教授 (00183913)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トパキノン / 中性子 / X線 |
研究実績の概要 |
銅含有アミン酸化酵素は,生物界に広く分布し種々の生理活性アミン類の酸化的脱アミノ反応を触媒する.本研究は土壌細菌Arthrobacter globiformis由来の銅含有アミン酸化酵素(AGAO)について,超高分解能X線結晶構造解析,および中性子結晶構造解析を中心とした解析により,タンパク質のダイナミクスによる酵素触媒反応の進行の詳細を明らかにすることを目的にする.本年度は広pH領域における反応中間体の高分解能X線結晶構造解析,および中性子結晶構造解析に向けた大型結晶の調製と得られた結晶に対する予備的な回折測定を行った. X線結晶構造解析については,酵素活性に比較的影響を与えず,かつ高分解能データの取得が可能な抗凍結剤のスクリーニングをおこなった結果,抗凍結剤として3Mマロン酸を用いることにより,最も高分解能の回折データ(1.12Å)が得られた.また上記条件を用いて,pH5-10の領域で分解能1.2-1.3 Å程度の反応中間体構造の決定に成功した. 中性子構造解析については,結晶化条件の工夫により測定用の大型結晶の作成(最大8-10 mm3程度)に成功した.また平成26年度のJ-PARCでの測定課題に採択され,予備的測定の結果,分解能2.2 Å程度の回折像が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究初年度であり,測定条件を決定することと,得られた条件を用いて予備的測定を行うことが目標であった. X線結晶構造解析において,我々はごく最近,分解能1.08Åの構造決定に成功したが,上記データは酵素活性に大きな阻害効果を与えるPEG200を抗凍結剤として用いたため,活性のあるコンフォマーをとっていない可能性があった.このため,本課題を行う上での最初の課題は,酵素活性に影響を与えずかつ高分解能データが得られる抗凍結剤を見つけることであり,本年度は無事それに成功した.またマロン酸は重水化物が比較的安価に手に入ることから,中性子構造解析の際の重水化剤としても利用できる. 中性子構造解析については,大型結晶を比較的早い段階で得ることに成功し,本測定を行うことが可能であったが,東日本大震災の影響で研究用原子炉(JRR-3)が停止しており,国内で唯一のタンパク質結晶中性子回折測定が可能なJ-PARCのBL03ビームラインに測定課題が集中し,十分な測定時間(本測定には10日程度必要)が得られず,予備的測定(測定時間1日x2回)しか行うことができなかった.しかし引き続き平成27年度のJ-PARCでの測定課題に採択されており,来年度には本測定を行うことが可能と考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度で測定条件をほぼ固めることができたので,平成27年度では本測定を行う. X線結晶構造解析においては,結晶への基質ソーキング法により中間体結晶構造を得る予定だが,pHによっては活性中心に残存した生成物との副反応が観察されたため,基質濃度や基質の種類を変えることにより反応条件を最適化する. 中性子結晶構造解析においては基質フリー条件での本測定,および期間後半では上記で最適化した条件を用いて,反応中間体結晶の予備的な回折実験を行うことを予定している.
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