研究実績の概要 |
銅含有アミン酸化酵素は,生物界に広く分布し種々の生理活性アミン類の酸化的脱アミノ反応を触媒する.本研究は土壌細菌Arthrobacter globiformis由来の銅含有アミン酸化酵素(AGAO)について,超高分解能X線結晶構造解析,および中性子結晶構造解析を中心とした研究により,タンパク質のダイナミクスによる酵素触媒反応の進行の詳細を明らかにすることを目的にする.本年度はこれまで中性子・X線回折実験を行った酸化型酵素(基質フリー型)の構造精密化を行った.また,反応中間体結晶に対し中性子回折測定を行い良好なデータセットを取得した. 酸化型酵素については同一結晶を用いて分解能:1.72 Å(中性子)/ 1.14 Å(X線)の回折データを取得しており,これらを用いて中性子・X線同時精密化を行った.これまでタンパク質の中性子結晶構造解析は30種類程度行われているが,分子量が1,000-2,000程度の小型のものが大半であり,AGAO(サブユニット分子量72000のホモダイマー)はこれを大幅に上回る.現在構造精密化はほぼ終了し,予想外の位置に水素(重水素)の核密度が検出され,これまでに提案された反応機構を大幅に書き換えることが見込まれる. またセミキノン反応中間体については,基質ソ―キングの条件を検討することにより,分解能1.6 Å程度の中性子回折データセットの取得に成功し,現在積分を行っている.また本結晶を用いて2018年五月下旬にPFにおいてX線回折測定を予定している.
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