植物ゲノムのエピジェネティックな遺伝子発現抑制機構として、転写装置と共役した遺伝子サイレンシングが報告されている。その中でも、RNA-directed DNA methylation (RdDM)は、DNAのde novoメチル化による発現抑制機構の一つであり、遺伝学的解析の結果から、この機構に関与する様々な蛋白質因子が同定されている。それらのいくつかはDDR複合体としてメチル化と転写装置を仲介していると考えられている。特に、その複合体は、染色体凝縮に関わる蛋白質に類似した構造的特徴を有しており、遺伝子不活性化機構と染色体形成機構の関連性が注目されている。 今年度は、遺伝子のコドンを昆虫細胞用に最適化することで、バキュロウイルスを用いたDDR複合体の発現系を構築した。特に構成サブユニットの中で最も大きいDMS1蛋白質は、大腸菌での発現や可溶性に問題があったが、昆虫細胞では、DMS3蛋白質とDMS7蛋白質との三者複合体として精製することに成功した。この過程で、DMS1蛋白質がDMS3-7二者複合体と安定な結合を維持するのに必要な領域は非常に短い部分に限定できることがわかった。これによって、今後、各種プロテアーゼによる限定分解や質量分析によって、より安定な部分を抽出するための方針を立てることができた。 また、前年度に論文発表した内容について、染色体関連分野の国際会議で発表した。これによって、様々な外国の研究者と交流を持つことができた。そのミーティングで知り合った外国の研究者と一緒に、依頼を受けた雑誌へ総説を執筆し投稿した。
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