研究課題
ニューロン由来エクソソームによるAbetaクリアランスがスフィンゴ糖脂質(GSL)糖鎖依存的に起こること、また、エクソソーム投与によりマウス脳内Abeta濃度が減少することを確認している。これらの結果からAbeta結合能力の高いエクソソームを検索し、含有GSLを分析することでアルツハイマー病治療用リポソームが作製できる可能性がある。平成26年度は、Neuro2a細胞およびマウス大脳皮質から調整した初代培養細胞(ニューロン、ミクログリア、アストロサイト)の培養液中エクソソームの質量分析によるGSL解析を行った。その結果、Neuro2aに関しては、細胞およびエクソソームそれぞれから約20種類のGSLが検出され、さらに細胞と比較してエクソソームには多量のGSLが含まれていることがわかった。また、シアル酸が結合したGSL分子種(ガングリオシド)がエクソソームに特に多く含まれていた。初代培養細胞に関しては、ニューロンエクソソームに、グリアエクソソームと比較して多量のGSLが存在することがわかった。またガングリオシドは特にニューロンエクソソームに多く含まれていた。さらに初代培養由来エクソソームを蛍光標識しチャンバースライドに接着させた後、Abetaを添加して両者の結合を観察したところ、ニューロンエクソソームにのみAbetaの結合が確認された。グリアエクソソソームへはAbetaの結合が見られなかった。エクソソームでは細胞と比較してGSLが集積していることから、膜表面でAbeta結合に関与するGSLクラスターが形成されやすい状態であると考えられる。また、脳細胞から放出されるエクソソームでは、ニューロンエクソソームのみがAbetaとの結合能力を保持している可能性が示唆される。来年度からのリポソーム作製に関しては、ニューロンエクソソームのGSL分子種、濃度を参考に行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究計画調書に記載した平成26年度の研究計画がほぼ完了し、27年度研究計画の実施のめどがついたため。
26年度の研究がほぼ予定通り遂行されたので、27年度は研究計画調書に記載した計画を進めていく予定である。具体的にはAbetaクリアランス用リポソームを作製し、疾患モデルマウスを用いた脳内等や実験を開始する予定である。
26年度購入物品として予定していたナノパーティクル解析装置が研究施設共有機器として使用可能になり、購入の必要がなくなったため。
26年度研究成果により当初の予定より多種類のリポソームを作製し機能を検討する必要が生じたため、27年度にリポソーム作製のための成分脂質および、機能解析のための培養用試薬、実験動物の購入費に充てる。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
FEBS letters
巻: 589 ページ: 84-88
10.1016/j.febslet.2014
Journal of Biological Chemistry
巻: 289 ページ: 24488-24498
10.1074/jbc.M114.577213
http://www.hokudai.ac.jp/news/140818_pr_pharm.pdf