ニューロン由来エクソソームによるAbetaクリアランスがスフィンゴ糖脂質(GSL)糖鎖依存的に起こること、また、エクソソーム投与によりマウス脳内Abeta濃度が減少することを確認している。これらの結果からAbeta結合能力の高いエクソソームを検索し、含有GSLを分析することでアルツハイマー病治療用リポソームが作製できる可能性がある。Neuro2a細胞およびマウス大脳皮質から調整した初代培養細胞(ニューロン、ミクログリア、アストロサイト)の培養液中エクソソームの質量分析によるGSL解析を行った。その結果、Neuro2aに関しては、細胞およびエクソソームそれぞれから約20種類のGSLが検出され、さらに細胞と比較してエクソソームには多量のGSLが含まれていることがわかった。また、シアル酸が結合したGSL分子種(ガングリオシド)がエクソソームに特に多く含まれていた。初代培養細胞に関しては、ニューロンエクソソームに、グリアエクソソームと比較して多量のGSLが存在することがわかった。神経細胞由来エクソソームにはGSLが集積し、膜表面でAbeta結合に関与するGSLクラスターが形成されやすい状態であると考えられる。しかし、ニューロン含有GSLを含む人工リポソームを作成しAbetaとの結合実験を行なったところ、エクソソームで観察されたような強い結合は認められなかった。エクソソームに含まれる他の脂質分子(コレステロールやスフィンゴミエリン等)やタンパク質分子がAbeta結合性GSLクラスター生成に影響している可能性が考えられ、エクソソーム膜成分のより網羅的なプロファイル解析が今後の課題である。
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