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2015 年度 実施状況報告書

光駆動型ナトリウムポンプの生理的意義とイオン輸送機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26440042
研究機関北海道大学

研究代表者

菊川 峰志  北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 講師 (20281842)

研究分担者 宮内 正二  東邦大学, 薬学部, 教授 (30202352)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード微生物ロドプシン / ナトリウムポンプ / レチナール / フォトサイクル
研究実績の概要

ロドプシンは、光センサーや光駆動型イオンポンプとして機能する膜タンパク質である。イオンポンプ型ロドプシンは、「光で瞬間的に活性化できる」という性質によって、輸送に含まれる要素反応を詳細に検討できる優れたモデルタンパク質である。本研究では、2013年に真正細菌から見出された新規のイオンポンプ型ロドプシンであるNa+ポンプ型ロドプシン(NaR)の要素反応を明らかとし、そこに関わる重要アミノ酸残基の同定を通して、NaRの分子機構を考察する。本年度は以下の成果を得た。
1.真正細菌 Truepera radiovictrixがもつNaR(TR1)の光反応サイクルの解析とイオン輸送活性の測定結果から、NaRのタンパク質表面には、Na+, K+などのカチオン結合サイトが存在すること。また、ここへのカチオン結合が、暗状態の構造を変調し、その結果、光反応初期に出現する中間体が変化すること。さらに、カチオンが結合しない場合にのみ、H+ポンプとして機能する、という知見を得た。
2.光反応サイクル中のNa+放出・取込みを直接的に検出するため、Na+感応膜を用いた測定系を構築した。クラウン化合物をイオノフォアとして用い、0.1 mM ~ 1 MのNa+濃度範囲で、直線的な膜電位応答を示す感応膜を作成した。脂質膜に再構成したNaR懸濁液に定常光を照射したところ、Na+濃度の減少を示す膜電位変化を観測した。よって、NaRは、光反応の初期にNa+を取込み、次いで放出することが、直接的な観測から明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、NaRを膜輸送担体のモデル蛋白質として捉え、その輸送分子機構の解明を目指している。目的達成のための具体的な研究項目として、以下の3点を設定している。
1.各輸送中間体で起こる要素反応を明らかとする。
2.輸送に重要なアミノ酸残基を同定する。
3.NaRの生理的意義を解明する。
本年度は、概要欄に記載したように、項目1に大きな進展があった。TR1を用いた解析から、NaRは、溶液中に存在するカチオンの種類に依存して、Na+-pumping cycle、non-pumping cycle, H+-pumping cycleの3種類の光反応サイクルを回ることが示唆された。3つのサイクルの相互比較から、輸送中間体で起こる要素反応を予測することができた。また、項目2に関連して、光反応サイクルに影響を及ぼす、カチオン結合サイトの存在を予想した。一方、項目3の知見を得るために、T. radiovictrixがNaRを発現する条件を検索したが、発現は検出できなかった。

今後の研究の推進方策

「現在までの達成度」欄に記載したとおり、本研究では、3点の具体的な研究項目を設定している。それぞれについて、以下のことに取り組む。
1.これまでに、Na+感応膜を用いた測定系を構築した。この系に、パルスレーザーを導入し、NaRが光反応サイクル中に起こす、Na+濃度変化の時間分解測定を試みる。この結果と、これまでの過渡吸収分光測定の結果を対応させ、各輸送中間体の要素反応を考察する。
2.光反応サイクルに影響を及ぼす「タンパク質表面のカチオン結合サイト」の同定を試みる。タンパク質表面に位置する酸性アミノ酸残基に変異を加え、光反応サイクルと輸送活性への影響を調べる。
3. T. radiovictrixを用いて、引き続き、NaRが発現誘導される条件を検討する。特に、培地の塩濃度と光照射については検討が不十分であるので、これらに重点をおいて、条件探索を行う。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、Na+感応膜を作成した。感度良好な感応膜を作成するため、高価な複数のクラウン化合物を試用する予定だったが、予想よりも少数の試用で目的を達成できた。そのため、少額ではあるが、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

「今後の研究の推進方策」で記述した通り、Na+感応膜の測定系にパルスレーザーを導入し、時間分解測定を行う予定である。その際に用いる、制御回路、光学部品、その他、遺伝子工学用試薬の購入に使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Characterization of a Cyanobacterial Chloride-Pumping Rhodopsin and its Conversion into a Proton Pump2016

    • 著者名/発表者名
      Hasemi, T., Kikukawa, T., Kamo, N., Demura, M.
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 291 ページ: 355-362

    • DOI

      10.1074/jbc.M115.688614

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Probing the Cl--pumping photocycle of pharaonis halorhodopsin: Examinations with bacterioruberin, an intrinsic dye, and membrane potential-induced modulation of the photocycle2015

    • 著者名/発表者名
      Kikukawa, T., Kusakabe, C., Kokubo, A., Tsukamoto, T., Kamiya, M., Aizawa, T., Ihara, K., Kamo, N., Demura, M.
    • 雑誌名

      Biochim. Biophys. Acta

      巻: 1847 ページ: 748-758

    • DOI

      10.1016/j.bbabio.2015.05.002

    • 査読あり
  • [学会発表] Inversion of sequence and direction of the proton transfer in proteorhodopsin at high pH2015

    • 著者名/発表者名
      Tamogami, J., Kikukawa, T., Nara, T., Demura, M., Muneyuki, E., Kamo, N.
    • 学会等名
      The 2015 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies
    • 発表場所
      Honolulu (USA)
    • 年月日
      2015-12-19 – 2015-12-19
    • 国際学会
  • [学会発表] Conversion of a novel chloride pumping rhodopsin to a proton pump with a single amino acid replacement2015

    • 著者名/発表者名
      Hasemi, T., Kikukawa, T., Kamiya, M., Aizawa, T., Kamo, N., Demura, M.
    • 学会等名
      第53回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      金沢大学(石川県・金沢)
    • 年月日
      2015-09-13 – 2015-09-13
  • [学会発表] Functionally important residues in the cytoplasmic half channel of light-driven Cl- pump Natronomonas pharaonis halorhodopsin2015

    • 著者名/発表者名
      Shimosaka, A., Kikukawa, T., Kamiya, M., Aizawa, T., Kamo, N., Demura, M.
    • 学会等名
      第53回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      金沢大学(石川県・金沢)
    • 年月日
      2015-09-13 – 2015-09-13

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公開日: 2017-01-06  

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