研究課題
平成28年度は、細胞老化に関して、さらに詳細な検討をすすめた。具体的には、SA-b-Galとは別の細胞老化マーカーとしてDcR2およびp14ARFを用いた検討を行った。HGF刺激したHepG2細胞ではDcR2の発現が上昇したが、不可逆的増殖停止の誘導後、HGF除去により発現量は減少したため、少なくともHepG2細胞では、DcR2 は細胞老化マーカーとして不適であると考えられた。p14ARFの発現は、無刺激の0時間および96時間に比較して、HGF刺激96時間で発現が上昇していた。これら複数の細胞老化マーカーで異なる結果となったため、HGFの作用が細胞老化誘導かどうかを結論することは困難になると共に、何をもって細胞老化とするのか再考察が必要となった。一方、HGF刺激に伴うエピゲノム変化の解析を進めたところ、HGFによるヒストンH3K9me3の減少と同時に、hetero chromatin protein Hp1b の減少も見出した。Western法によりH3K9のメチル化酵素を調べたところ、mono/diメチル化を担うG9aの発現がHGF刺激後48時間から顕著に上昇すること、この発現上昇がRas活性化依存的であることを見つけた。さらに、HGFによるH3K9me3の核内シグナル強度の減少が、G9aの阻害剤BIX01294で抑制されたこと、また、同時にG1期停止が抑制されたことから、HGFによるH3K9me3変化および細胞増殖停止にはG9aの発現上昇が必要であることを明らかにした。さらに、HGF刺激によるH3K27me3 とH3K4me3 の増加も新たに見出した。H3K9me3の減少、およびH3K27me3 と H3K4me3 の増加は、共に遺伝子発現の活性化を反映する。そこで、HGF処理後48時間までの不可逆的増殖停止に至る間に発現変化する遺伝子の網羅解析をRNA-seq法により進めた結果、HGF刺激により発現変化する遺伝子群を見出すことに成功した。
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